
目次
はじめにおことわり
お久しぶりです、お市です。いつものシーズン前の選手名鑑はどうしたって?苦情は急に寿命を迎えたMacBook Airくんにお寄せ願います。。どんなものも変わっていくもの。万物は流転する、いわんやMacBookのコンディションもや、です。
※今回はケータイで書いてますので画像少ないぞ!お見苦しいところがあるかもですがご容赦を!
我らがマリノスもご多分に漏れず変わりました(無理矢理な導入)
優勝メンバーの離脱と新たな選手の加入、そして予期せぬ負傷離脱。優勝した去年のチームとは別物の状態で、これまた変容を遂げつつある川崎と早々にがっぷり四つです。そんな新生マリノスの船出はどうだったか、勇猛果敢に振り返っていきましょう。
今季初レビュー、はっじまーるよー。
スタメンとその狙い

川崎は家長が開幕に間に合ってRWGで先発。谷口移籍で懸念されたCBの相方は実績のある車屋に。ダミアン、小林の2枚看板の離脱を受けて宮代がCFを務める。注目はむしろサブメンバー。元日のインカレ決勝での活躍が記憶に新しい大学屈指のアタッカー山田新、裏へのランニングと間受けの両方ができる対マリノス決戦兵器候補の瀬川が並ぶ。
マリノスは去年のチアゴに引き続き今年も開幕間際に守備の柱の高丘が移籍する緊急事態。前週のスーパーカップで上々のパフォーマンスを見せたオビが開幕スタメンを勝ち取った。小池龍太の負傷離脱を受け上島の起用でどよめきを呼んだRSBには松原がなんとか間に合ってくれたので起用。ベンチには新たなWGとして期待されるUターン転職系スピードスターの井上健太が入った……ってCFおらんやんけ!!
前半

序盤は噂されたポジションチェンジを控えた川崎。マリノスとしては川崎のIH脇坂と遠野をボランチコンビが捕まえやすく、比較的プレスをかけやすかったはず。
とはいえやはり自陣で引き込んでマルシーニョの大好物SB裏スペースを拡大したい川崎は、自陣ゴール前でもすぐには蹴飛ばさなかった。宮代はアンカー越しのパスコースを作りに低い位置に、家長は数的優位を作りに逆サイドに行った。
ある時家長が逆サイドに留まっていると、エウベルの元にソンリョンのパスがどんぶらこどんぶらこと流れてきて、これをたくまに流してあっさり先制。
相手の深い位置でのパスを拾ってショートカウンターで点をもぎ取るという形は、かつて(なんなら今も)自分たちがやられてきた形なので「お互い大変すね…」というシンパシーもちょっとあった。
この後もマリノスはアンロペ+たくまが上手く外へと誘導させ川崎の攻撃パターンをサイド起点のもののみに限定させることに成功。サイドから中へのパスは前週のスーパーカップで猛威を振るった喜田名人となべこの回収だけでなく、普段から仲のいい2CBつのぴとしんちゃんのツノシンコンビも前に出て対応した。
ただ、前半も15分が過ぎた辺りから2023バージョンの川崎がそのベールを脱ぐことになる。数少ないカタールW杯を経験したJリーガー、RSB山根視来がボランチのような位置を取り始めたのだ。いわゆる(我々マリサポが慣れ親しんだマツバラロールこと)偽SBである。
正直ニュース記事で「山根が中に入る」「マンチェスターシティの踏襲」といった文言を見かけても「ああ、アレね…最初苦労するんすよ」くらいにしか思っていなかった筆者だが、W杯経験者は伊達ではなかった。
判断の正確性とキックの精度を兼備する彼がボランチの位置に入ることで、川崎の中盤は逆三角形から橘田との2ボランチ+遠野&脇坂の2IHという四角形に移行。しかもボールが回ってくる直前に山根がこの位置取りをすることが多かったため、あらかじめアンロペとたくまのプレスでパスコースを消すこともままならなかった。
同じSBが内側を取る2018マリノスのマツバラロールと比較すると、山根の立ち位置はやや後ろ気味。「自分がIHのような立場に入りプレーする」前者とは違い、「IHを押し上げて自由にプレーしてもらう」形だった。(ぶっちゃけ山根の方が本家シティの偽SBに近いかも)
山根の絞りにより比較的自陣でボールを持ちやすくなった川崎だが、なかなかゴールが割れない。遠野の決定機や宮代のバー直撃弾などチャンス自体はあったが、単発的だった。
そこで立ちはだかったのが、マリノスの4バックだった。序盤ほどプレスはかけにくくなっていたが、川崎の起点は家長の出張や山根に押し出されたフリーの遠野経由でのマルシーニョに限られていた。最大戦力での攻撃であっても出所がわかってしまえば準備はできるとばかりに健さん+しんちゃんの2019優勝を知る右のDFコンビが奮闘。負傷明けの健さんが振り切られても、出足鋭く出たしんちゃんが振り切った後に大きくなったタッチを拾う。「あなたアレとって」と言われても間違えずに醤油を差し出してくれる熟年夫婦のようなコンビネーションだった。こ
の2人に加えてつのぴも宮代を完封し、右サイドに戻ってタメを作る家長にはかっちゃんが見事な対応を見せこちらもシャットアウト。前述の遠野の決定機を凌いだオビのビッグセーブもあるなど、自陣守備での連携がかなり良くなっている点は評価できるポイントだった。
後半

前半を0で乗り切るどころか、セットプレーからの流れで2点のリードを奪ったマリノス。たくまはまだしも流石にアンロペは無理させられないと見たか、4-4-2で前半ほど深い位置までプレスしなくなった。
だが同時に、このプレスが弱まった背景には川崎側の修正が2つ関係していた。
1つはLSB佐々木が降りることによる3バック化。前半からマルシーニョのサポートとして輝いていた佐々木だが、彼もまた山根同様状況判断とキックに優れていた。こ
の背番号5が2CBと並ぶことで、マリノスのアンロペたくまコンビと3vs2の数的優位を実現。喜田名人となべこの2ボランチが狙う彼らからのパスも、3センター+山根が顔を出す形で悠々ピックアップし、これで前半手応えバッチリだったマリノスのプレスは無力化されることとなる。
もう1つの修正が、RWG瀬川の投入だった。家長は確かにフリーマンとしては卓抜している。相手の嫌がるところに顔を出してボールをもらえば持ち前のテクニックでチャンスシーンを演出できる。だが、山根や佐々木のおかげで自陣で引きつけられる状態を思うと、チャンスシーンを作るフリーマン家長ではなく、チャンスを仕留めるために高い位置を取り続ける瀬川だった。ス
プリントからクロスやシュートまでこなす瀬川にかっちゃんがかかりきりになるシーンが増えた上、佐々木&マルシーニョの左サイドにマリノスを引きつけた後に脇坂経由でサイドチェンジというパターンも出せるようになった。これによりマリノスは左右に振られ、マルシーニョ止めればヨシ!ではなくなってしまった。
このようにしてプレスはかからないわ、左右に振られるわと散々な状態になったマリノス。それでも何度かカウンターのチャンスはあったのだが、自陣を出る前に前後分断気味の3バックにインターセプトされる悪循環にハマっていった。この時カウンターの突破口としてWGやたくまにボールが多く渡ったが、彼らが数的不利の状態でもゴール方向へ難度の高いパスを狙い続けたのは少し気になった。
前半も同様に閉じ込められた後に脱出するシーンがあったが、特になべこが攻め急がず周りの攻め上がりを待つようにターンして時間を調整していた。これがなくスピードに乗ったまま3人弱の即興でゴールまで行こうとしていたため、些細なパスミスでまた相手に押し込められてしまった印象がある。キャンプを見る限り、極力敵陣でプレーする時間を増やすのがケヴィンの目指す所のようなので、早々にエウベルを下げたのも彼主導の即興的なコンビネーションを諌める意味があったのではなかろうか。
後半だけを見るとシュートはわずか1本(マルコスが獲得したFK)のみとタコ殴りに遭ったようなマリノスだが、数字ほどあまりダメージを負った印象がないのは、3-2-5状態での川崎のフィニッシュの設計がまだ途上だったためかもしれない。確かにラスト1/3までの侵入は許したが、そのほとんどがサイドのタッチライン際で、最終的にシュートに至るためにはクロスが必要という状態だった。プレスの対象が頻繁に行方不明になり困っていたはずの宏太兄貴も次のようにコメントしている。
--川崎Fの右SB山根 視来選手がポジションを中に絞ってきました。
ポジションを変えてきたことに関しては、そこまで戸惑いはありませんでした。ただ、ボールサイドに人数をかけてきて距離感よくボールを回してくることは頭には入っていましたが、すごく回されたので、自分たちの体力を削られたところはありました。ただ、アタッキングサードで回されたわけじゃなく、中盤で回されただけなので、最後の最後で踏ん張れば点は取られないとも感じていました。
Jリーグ公式サイトより抜粋
https://www.jleague.jp/sp/match/j1/2023/021701/coach/#player
山根や佐々木の功績もあり想像以上の完成度を誇った川崎の3-2-5だが、それでも練度はまだ途上。開幕戦で当たれたのは実はラッキーだったかもしれない。
総括と評価
今季のレビューでは、マリノスを語るキーワードでもある「ゲームを支配(dominate)する」部分に焦点を当て、試験的に以下の評価軸をもってパフォーマンスの評価をしていこうと思う。(いきなりやめるかもしれないし評価項目も変えるかもだけど)
- シュート数は相手を上回ったか
- プレーエリアは自陣側1/3(ディフェンシブサード)より相手陣地側1/3(アタッキングサード)の方が多いか
- xG(ゴール期待値)は相手よりも高いか
- 敵陣でのボール奪取は相手よりも多いか
この試合における各項目の評価結果は以下の通り。
- シュート数は相手を上回ったか:No(川崎18:10横浜 via SofaScore)
- プレーエリアは自陣側1/3(ディフェンシブサード)より相手陣地側1/3(アタッキングサード)の方が多いか:YES(川崎側31%:27%横浜側 via SofaScore)
- xG(ゴール期待値)は相手よりも高いか:No(川崎1.64:1.1横浜 via SPORTERIA)
- 敵陣でのボール奪取は相手よりも多いか:No(川崎27:24横浜 via 手集計)
ボール支配率も63:37とボロ負けなので、敵陣でボールを握りプレーしつつシュートやチャンスの回数を増やすという意味では、この試合は失敗だったと言わざるを得ない。
ただそれでも、この開幕戦にケヴィンが手応えを感じているのは、何度かプレスからシュートへ辿り着いているからだろうし、そのプレスの裏を取られても尚耐え切ったDF陣への賞賛を指揮官が惜しまないのも道理といえる。
ケヴィンも西澤TDも今季のキーワードは「成長」と言ってはばからず、具体的な順位目標を置いていない。しかしだからといって「2,3望んだようなシーンが作れたから負けてもヨシ!」というわけではない。心底勝ちを求め、目の前の相手の攻略に工夫を重ねに重ねて、大小様々な駆け引きを制してはじめて手に入る砂金の一粒のような「成長」や「手応え」に価値を見出す。それこそが2023マリノスの目指す場所なのではなかろうか。
そんな「成長」を軸とした考えから見れば、目の前の1勝のために工夫と献身を完遂したこのゲームには、それこそ単なる34分の1以上の意味があったと言っていい。
そして何より工夫と献身で困難を打開するトリコロールの姿は、観る者の心を無条件に揺さぶったはずだ。アタッキング・フットボールの要素はたしかに薄かったかもしれないが、守備陣の奮闘が、前線の断続的なチェイシングが、そして途中出場のマルコスやイノケンのひらめきは、常に勝ち筋を狙い続ける勇猛果敢なトライの連続だったと言える。
37%まで支配率が落ち込もうと損なわれなかったのは、勝ち星にこだわり続けた執念を燃料に戦い続けた勇敢なトリコロールの姿勢と、サポーターの胸を打った名状しがたい熱情かもしれない。
<この項・了>