【今年の無念】2022年J1リーグ第34節vs神戸(A)に寄せて【今年のうちに】

どうも、「試合後のご飯とかでいえば関西アウェイの中で神戸が一番好きかもしれない」お市です。(京都は今季参加できず。来季は土日で頼むぞ日程くん)

早いもので2022シーズンのリーグ戦も最終節。この2022マリノスが挑む最後の公式戦となりました。思い返せば今年も色々ありました。(ここで『旅立ちの日に』を流す)

コロナパンデミック状態でキャンプもままならず、チアゴが抜けてエドゥとアンロペが来た\シーズン前/
ホームでの川崎の克服から波に乗って鬼門カシマの攻略に沸いた\前半戦/
芝もボールもスコールも何もかもがつらすぎたけどそれでも現地参戦組が羨ましかった\ベトナム/
嘘みたいに勝った\7月まで/
嘘みたいに負けた\8月/
さすがに選ばれすぎじゃねえかと思った\E-1/
怪我人続出でもなんとか耐え抜いて首位を堅持した\後半戦/
優勝見えてからまさかの\大失速/
それでも僕ら横浜は2022シーズン\優勝します/

と言いたいとこですが、よりにもよって因縁浅からぬ相手が最後に立ちはだかります。ヴィッセル神戸、私の苦手なチームです。

Embed from Getty Images

忘れるものか8/18ACLラウンド16、忘れるものか翌日抜け殻状態で捌いた残務。最後のホイッスルを聴きながら悔しくて握った拳の感触は、今でも思い出せるほど鮮明なほどです。

たしかに今の状況を考えてみるとマリノスが負けて川崎が勝つ or マリノスが引き分けて川崎がトーキョーに12点差つけて勝つ以外は優勝できる状況ではあります。ですが、神戸にACL以来勝てずにフィニッシュしたらシャーレを奪えたとしても一抹の悔しさは残るでしょう。せっかくなら、「今年の汚れ、今年のうちに」というマジッ◯リン精神で勝って苦手意識もなくした上で締めくくりたいものです。

自分達で蒔いた種(©️喜田拓也)とはいえ、優勝の行方も左右するこのリベンジマッチ、ただならぬ最終戦をマリノスはどう戦うかを考えていきたいと思います。

それでは、今年最後のトップチームプレビュー、はっじまーるよー。

Q. 神戸最近調子良さそうだけど?

Embed from Getty Images

A. 目下5戦4勝1敗、9得点3失点。神戸が見出した「秋の最新コーデ」は”半端ない”。

忙しい人向けの神戸の特徴は以下の通り。

攻撃(ボール保持)

  • CF大迫、RMF武藤、LMF汰木の前3枚の破壊力を存分に活かす形
  • あまりDFラインでボールを長く持たず、ロングボールを前線(主に大迫)に蹴飛ばす
  • 基本は大迫に当てて前進。次点は汰木、LSB酒井高徳のいる左サイドから前進。
  • 大迫はエリア内に飛び込むより、手前でタメを作ることが多い
  • 代わりに武藤、OMF小林祐希がクロスのターゲットになったり、山口蛍が3列目から飛び出してくる
  • 自陣でのボール保持はRSB山川が絞って2CBと合わせて3バック風になるケース多し

守備(ボール非保持)

  • 基本は4-4-2で幅の広いブロックを組むが、アンカーにはマンツーマンでつくことも
  • サイドチェンジが続くとSBの背後が空きがち
  • 前線からのプレスは控えめだが大迫筆頭にパスコースの限定は徹底
  • DMF大崎、CB菊池リューホ、小林友希らが前を向いて奪う形が理想形
  • ロストした後に5秒はプレスをかける「5秒ルール」はボランチから前はやってそう
  • DFラインの撤退は比較的早く、エリア内に5,6人”人垣”が組まれることもしばしば

セットプレー

  • 川崎戦で30m超の直接FKを叩き込んだ小林祐希、コーナーキックでアシストを量産する汰木が主なプレースキッカー
  • セットプレーからのゴールが9得点で全体から見た割合は26.5%(via Football Lab)
  • コーナーはニアに人をかけて真ん中を空け、ターゲットの選手にピンポイントで汰木が合わせることが多い
  • コーナーキック守備はゾーン傾向。マークは2,3枚、ペナルティエリア前に1人クリア要員。あとはゴール前に密集し”人垣”になる。

「人手と工夫をかけて守る」「少人数のカウンターでも十分怖いタレントがいる」「大迫半端ないって」という8月にマリノスが泣かされたシンプルさは相変わらず。ブランドは統一しながら少しアクセサリ等を変えていくマリノスの普段着コーディネートに対し、神戸は豊富なクローゼットからその時に合った一着でキメにかかってくる。

この秋でいうと、カウンターの切れ味向上に大きく貢献した飯野・当分顔も見たくない・七聖がいない。RMFとして大外のレーンを駆け上がる彼がいないとなると、自陣に引き込んで飯野・一刻も早く海外に羽ばたけ・七聖で刺すのは難しい。

そこで神戸は「1点を確実にもぎ取り、死守する」ことへ舵を切った。具体的な手段としてはボランチも務める小林祐希(コバヤシユウキの山形に田んぼを持っている方。以下、米屋)のトップ下起用が挙げられる。

Embed from Getty Images

山口蛍、大崎のボランチコンビは広範囲に動き回る(特に山口蛍はピッチ状に3人くらいいる気がする)反面、彼らが釣られた後のスペースを使われるシーンも散見された。米屋は相手アンカーのケア含め戻ってこのスペースを埋める仕事もしている。また、ボランチだと守備に追われて発揮しきれなかった米屋の攻撃性能も、1列上がったことで存分に享受できるように。川崎戦の直接FKなど自慢の左足だけでなく、エリア内でクロスに合わせる山口蛍のタスクもできており一躍重要人物に躍り出た。

ただ、あくまで神戸の主役は変わっていない。8月も立ちはだかった大エース、大迫・半端ない・勇也だ。
身も蓋もないことを言うと、もう存在がズルい。彼が大抵の後ろ向きのボールをめっちゃトラップするので、なんでもないクリアボールすらカウンターの呼び水となるピンポイントパスに変わる。多くのJリーグDFは皆滝二の中西さんになってしまう。

(まあ出来るのはもう皆わかってるから言われたところでどうしようもない)

確実にボールを収め、奪われない選手がいるだけで、やはり周りは頼りたくなるものだ。
DFラインは常に彼の居場所を視認し、目下成長中のLMF汰木(マリノスユース2013OB、瀬谷区出身)も「サコさん、頼んます!うおおおおお!」と大迫に預けてから全く疑うことなくフリーランを行う。ここぞの場面でゴールを奪うエースっぷりもさることながら、武藤、汰木、小田らスピードに長けたアタッカーの良さを引き出しDFのビルドを助ける彼の姿は、大黒柱といって差し支えない。

守備は「J屈指の実力者が群れを成して人垣を作っている」イメージ。
大迫がクリアも収めて時間を作ってくれるから、という理由で神戸は守備に人を避ける。前半9分で退場者が発生した広島戦を除いて直近5試合で1点差のゲームを続けてその多くに勝っている理由もそこにあるだろう。
トゥーレルが欠けたCBには、好プレーのたびに叫ぶ青森山田OBの鑑たる菊池リューホが戻ってきたし、小林友希(アンジェが狙ってる方)も成長してきた。酒井高徳のインターセプトは相変わらず冴えている。正守護神前川、我らがよく知る飯倉が離脱した(らしい)GKには幅広い守備範囲を誇る大卒ルーキー坪井がいる。
4-4-2ブロックでスピードダウンした後はなかなか攻めにくい。

残留は決まっているものの、ホーム最終戦ということでモチベーションは高いはず。堅い城壁と半端ない大黒柱を持つ秋の神戸は決して侮れない相手といえよう。

Q. マリノスが気をつけるべきこと、やるべきことは?

Embed from Getty Images

A. サイドはあくまで布石。横に揺さぶって背後をとり続ける。

8月の敗戦を思い出すと、「WGにボールは渡せたけれど、その先がない」というシーンが多かったと思う。それでも無双ゲージ満タンのエウベルがいたので何気にゴールまでは迫れたが、彼にドリブルコースを空けるなどサポート役を一手に担った永戸のかっちゃんがガス欠を迎えるなどじわじわと首を絞められていったゲームだった。
今回も「ボールを持つのはマリノス、神戸はロングキックでひっくり返してカウンターを狙う」という大まかな構図は変わらないだろう。なので、WGが孤立してサイドに祈る他なし、という8月の二の舞を演じるのはまず避けたいところだ。

そこでキーになるのがエウベルと並んで好調を維持する、なべこことボランチの渡辺皓太だ。

Embed from Getty Images

神戸の4-4-2ブロックは、DFライン裏のスペースとサイドのスペースを意識しているからか、縦横ともに幅は広く設定されている。大迫と米屋が形成するFWのラインが、相手DFが持つボールを狩りにいくハイプレスをあまりかけないのも後ろを考慮してのことだろう。「ゆっくりパスを回して食いつかせて裏を狙う」は難しそうだ。

そこで狙いたいのが、守備範囲の広いボランチの周り。ある時は最終ラインに降りたり、またある時は相手の隙間でボールを引き出したりと動き回りつつもパスの循環を変えていけるなべこがいかにこのスペースを空け、タッチできるかが1つの鍵になるはずだ。アウェイ名古屋戦、ホーム浦和戦と相手の陣形を揺るがし陰のMVPとなったパフォーマンスをなべこが出せれば、近くの選手にしかパスが出せない各駅停車状態もWGに祈る他なしの状況も自ずと避けられるだろう。

また、前述の通り神戸のカウンターの大黒柱は大迫である。彼に好き放題後ろ向きのボールめっちゃトラップされてはたまったものではないので、ここはCBエドゥの奮起に期待したい。

Embed from Getty Images

すっかりDFのリーダー格となったエドゥは前節浦和戦でも(あっさり裏を取られた失点こそあれど)マリノスキラーのユンカーを封殺する好パフォーマンスを見せた。彼と岩ちゃんのCBコンビがカウンターの芽を潰しているからこそ、SBより前の選手たちは安心して敵陣に押し込める。次なる相手は大迫。1点がものを言うこのゲーム、リーグ屈指のCFを相手にした大仕事を成し遂げて今季を締め括ってほしい。

守備を固めて速いカウンターやセットプレーで一刺しを狙う相手に勝てるか、まさしく2022マリノスが1年間頭を抱え続け苦しんだ課題だ。最後の最後で試行錯誤の成果を出さないとシャーレが奪えない仕組みを作るとは、まったく日程くんはとんだシナリオライターである。コラそこ最終節までもつれたのはだいたい自分達のせいだろとか言わない

遅攻、被カウンター、セットプレー。長らく課題になった諸問題への今年の進歩を見せつけて、王座を奪還しよう。

予想メンバー

まったく当たる気はしないが、最後にメンバー予想。

マリノスは前節から特段変えることはないはず。好調が続くボランチデュオきだなべこはそのまま、トリデンテも前節同様遅攻にも対応できるWG2人と「ネクストゲーム、わたし、2ゴール」と連続ドッピエッタに自信を覗かせるアンロペちゃんをCFに。(公式Twitterより。該当箇所は7:32あたり。日本語でのヒーロインタビューもいけるんじゃないか)来季に向けた仕込み作業としてヤン・マテウスa.k.a.やんすは今節もベンチ入りすると予想。

反対に神戸は若干読みにくい。なにせ誰が怪我から戻ったかなどがわかりにくい。前川だけでなく飯倉も負傷している(?)GKは前節同様坪井を想定。またCBだが、伸び盛りの小林友は出しておきたいはず。ここも前節と同様と予想。練習復帰した(っぽいのが公式インスタから窺える)トゥーレルはイニエスタとベンチスタートか。

おわりに〜1位と2位の差〜

Embed from Getty Images

最後に個人的な思いを吐かせてほしい。(展望とかは全部書いたからエモ狙いの文はいらんって人はここで閉じてください)

2019年、終盤の大まくりで差し切ってシャーレを掴んで以降、マリノスは浮沈を繰り返した。2020は連戦に次ぐ連戦で画面越しでも選手の疲労が見えていたし、2021年は今のアタッキング・フットボールを築いたアンジェが引っこ抜かれたし、今年だって今でこそ優勝に最も近い位置にいるが、思い通りにいかない時期はあった。

そんな双六で”1回休み”を5ターン連続で引くような歩みではあったが、2019以後のマリノスは”ふり出し”の目は出さなかった。積み上げたものを全て叩き捨てなくてはいけないかと苦悩した日の後も、今までの全否定などはせずに数ミリずつでも前進を続けた。

前進し続けた結果として、マリノスは安定的に勝ちを計上できるクラブになりつつある。2021年に出した1試合平均勝ち点2.07、得点2.2、失点0.9(参照:Soccer DB)には劣るが、今季もここを勝てば平気勝ち点2.00と、2シーズン連続で高勝ち点を期待できるチームだと証明できるだろう。2020年こそ落ち込んだが、2019、2021、2022と直近4年で3回も平均勝ち点2点台に載せているチームはマリノスだけだ。

内容を見ていても、明らかに充実が見られる。「速さと理不尽で仕留める」が常套句だった2019年と比較すると、スピードダウンを余儀なくされても崩せたシーンは増えてきたし、苦手だと言ってきたセットプレーにも磨きがかかってきた。

だが、それでも、記憶されるのは優勝したチームだけだ。

今季よりも勝ち点を積み上げ得点王まで輩出した2021年は2位だった。
マリサポは決して最終結果だけを見て不甲斐ないと言うことはなくそれまでの戦いぶりあと2021川崎とかいうやりこみすぎたサカつくばりに勝ち点を積むチームがいやがったことを忘れないだろう。けれど、より輝かしい記憶として語られるのは、出来ることは少なかったけれどシャーレを奪った平均勝ち点2.06の2019年だ。「歴史は勝者のためにある」とはよく言ったものだと思う。

だからこそ、より完成度が上がったこの2022マリノスを、「優勝したチーム」としてマリサポだけでなくサッカー関係者すべての記憶に残したい。エゴでしかないが、それが最終節を前にして筆者の胸に去来する嘘偽りない本音だ。

今年のチームにも、例年通りさまざまな人の思いが詰まっている。
選手スタッフサポーターはもちろん、マリノスが初めてのスポーツ観戦になった人が感じた高揚感、途中でチームを去った選手の無念、今年でクラブを去る人々の有終の美への思い、そして今シーズンの戦いに幕を下ろさざるを得ず一時は引退もよぎる淵から這い上がり「チームのため」とやれることのかぎりを尽くす背番号17の心意気。それら全ては”優勝へのプレッシャー”などという足枷ではない。1枚の銀皿を求めるトリコロールの船員たちの”原動力”だ。

まあとどのつまり「どうだ、俺たちすげえだろ」と言いたいだけである。
だが、それがマリノスの外や子々孫々に至るまで語り継げるのは、シャーレを掲げて胸の星がつければこそだと思う。何度も言うが形の残らない2位では忘却の彼方へ飛んでしまう。2021年でそれは痛いほど分かった。

シーズン当初からゴール裏の太鼓のリズムは「この街にシャーレを」のリズムを叩き続けた。
最終盤になった今、アウェイの地ではあるが声に出してこの一節を歌える位置につけているのは幸せだ。
その幸せを結実させるために、我らは叫ぶ。

ヨコハマにシャーレを、ヨコハマに頂点を、と。

ずっと欲しがっていたものはすぐそこ。何度か掴もうとして指の間をすりぬけたけど、今度は掴んで離さない。タイトルとるんだ、絶対に。

<この項・了>

コメントを残す