【違うでしょ】2022年J1リーグvsFC東京(A)【そこは笑うトコロ】

どうも、「好きなガンダムアストレイはガンダムアストレイレッドフレーム」のお市です。SEEDはアニメ版だけにあらず。

さて、川崎戦からACL神戸戦までの失意の4連敗を経て、マリノスが帰ってきます。その前は絶好調の時に代表ウィークが挟まって焦らされた感じでしたが、ヤキモキした思いでお預けを食らったのは久々ですね。余談ですが、私の貧弱フィジカルはこのお預けに耐えきれず腰痛を再発しました。

神戸戦からかれこれ2週間弱。カップ戦での連続敗退は、シャーレ奪還に向けて休養と課題への回答を考える時間をトリコロールにもたらしました。そんな我らを手ぐすね引いて迎え撃つのは絶賛改革中のアルベル・トーキョー。5月6月こそ波に乗り切れなかったものの、徐々にその調子は上向いています。

残暑厳しい飛田給(※味スタはマジで熱が篭もるので当日暑かったら要注意)で激突する首都圏の2クラブ。順位以上に勝ち星を求める者同士のゲームを占います。

ひさびさプレビュー、はっじまーるよー。

前回対戦ふりかえり

マリノス30周年記念試合となったこのゲームは、トップ下として2試合目を迎えた西村拓真のヘディングで幕を開ける。今季ここまでの躍進を支えているたくまの2列目起用を不動のものとしたのは、このゲームとアウェイ鹿島戦だったと言っていい。

ただそのわずか4分後、自陣でのビルドアップ中に渡辺皓太がディエゴ・オリヴェイラにかっさらわれて安部に同点弾を許すなど、トーキョーのプレスがマリノスを苦しめるシーンも散見された。ボール保持よりもマリノスにボールを持たせつつプレスで自由を奪うことに重きを置いたトーキョーに苦しめられ、前半を辛くも1-1でターンした。(思えばその次の広島戦でプレス地獄に直面した布石だったか)

ただマリノスはWG交代による味変でこの窮地を打開。水沼宏太と仲川輝人というクロス、スピードとそれぞれ明確な武器を持つ2人を投入することでゴールへの道筋を明確にし、トーキョーの最終ラインを押し下げた。特に如実に効果が現れたのが後半開始数分での宏太兄貴→アンロペのゴール。当日急造のLSBだったトレヴィザンの立ち位置が曖昧になっていた裏から抜け出し、高精度クロスを見舞った宏太兄貴は、まさにFZKM(古巣絶対◯すマン)の名に恥じぬ仕事ぶりであった。

その後テルが松木に2枚目のイエローを突きつけ勝負アリ。上手くいかなかった前半を受けて後半早々に勝ち越ししたモメンタムの掌握が光ったマリノスが30周年記念試合を華々しく飾った。

小ネタ

  • 直近5試合の成績は4勝1敗でマリノス優勢
  • ケヴィン・マスカットはマリノス就任後のFC東京戦3戦全勝中
  • 2019年以来このカードでは年に1度必ず退場者が出ている(2019パクイルギュ、2020アルトゥール・シルバ、2021森重、2022松木)
  • 対マリノスを得意とするFC東京の選手:木本(12試合、勝率75.0%)
  • 対FC東京を得意とするマリノスの選手:エドゥアルド(11試合、勝率72.7%)

FC東京側:見えかけた最適解と使い慣れた武器

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  • 公式戦直近5試合3勝2敗、13得点9失点
  • その間アンカー、DF、GKの計5人の顔ぶれに変更なし
  • エース、ディエゴ・オリヴェイラは前節8/27柏戦で負傷交代
  • チーム内得点ランクトップはアダイウトンの9ゴール

前回対戦時は得点も失点も少ない、「負けないチーム」だったが徐々にゴールシーンが(両軍陣地で)増えてきた。やはりアルベル監督の進める改革は漸進的ではあったが、じわじわと次のステップに入ってきつつあると言っていい。

とりわけゴールまでの形の完成度は、前半戦と比べれば飛躍的に進歩している印象を受けた。「ファストブレイクの時間だオラァ!」と質という名の釘バットは鳴りを潜めたが、その分ロジカルに相手を剥がしながら着実にゴールを陥れる強さを手に入れつつある。

立ち位置と、配置される選手のキャラクターとを加味した戦い方ができるようになってきているアルベルトーキョー。柏戦では5-3-2プレスを剥がして5-4-1ブロックを崩してゴールを割り、広島戦では3-4-2-1の泣き所のWB-CH間を好き放題使った。引き継いだ守備にパスで動かす習慣とロジックを根付かせた今の東京は、基礎工事の最終フェーズといったところか。

そんな進捗を示し始めたトーキョーの表の看板は間違いなくチームトップスコアラーのアダイウトンだ。

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前節柏戦で大黒柱のディエゴが負傷退場していたのもあるが、今季輪をかけてキレッキレなように思える。7月8月は途中出場だったりメンバー外の試合も多かったが、出場した5試合は5ゴール1アシストと堂々たる数字を残している。
ただそんな数字が霞むくらい速いしゴツいし止めようがない。一度トップスピードに入ったら最後。おそらく来日して以来指折りのコンディションの良さなんじゃないかと思えるくらいにぶっちぎってくる。

アダが表の看板なら、裏のキーマンは3センター中央にコンバートされた東慶悟だろうか。

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あまりアンカーの立ち位置に留まらず、フリーマンとして時にCBの前、時にSBの隣、またある時はゴール手前とショートパスの預け先として動く背番号10の姿は、語弊を恐れず言えば往年の梶山を想起させる。チームと同じく新たなステップに足を踏み入れた感のある青赤のNo.10を捕まえきれるかは、トーキョーにボールを持たれた時の1つのポイントだろう。

柏戦はこの表裏両面のキーマンが代わりに輝いた。

前半東が柏のプレスの方針変更を見抜きつつボールの預け先として機能したことで、松木と塚川という両IHは思い切り良くゴール前に顔を出せたしパスの出しどころに困るシーンは少なかった。サイドに流れてチャンスメイクするディエゴの空けたスペースにこのムキムキIHコンビを突っ込むことで、いざチャンスを作ってもゴール前に人がいないやんけシンドロームに陥ることもなかった。

まさに構造を突いた前半45分だったが、相手CB上島の退場やディエゴの負傷といったアクシデント、さらにビハインドからか背後の人数を少なく前がかった柏の陣形が相まって、前半とは大きく異なり昔とった杵柄のファストブレイクが炸裂するようになる。その時の旗振り役が2ゴールをあっさり上げてきたアダイウトンその人だった。

ディエゴの出場が微妙で、代役のフィリッピがより中央でのプレーを得意とする(あ、あとシュートつよい)タイプであること、それに加えて殴り合い上等のハイラインを敷くマリノスなので、柏戦前半のやり方を求めるよりかは前回対戦のようにプレスからテンポを作りにかかるだろう。いわば使い慣れたファストブレイクを軸とした戦い方だろうが、自陣ビルドにはアンカー東も踏まえたプレス回避を見せてくるはず。今季90分あたりのロングボール成功率がリーグNo.1の森重、「マリノス?セレッソの時さんざっぱら叩いたで」な木本からは良質なフィードが飛んでくるだろう。プレスにいったもののかわされてアダイケーーーーー!されると飯野にやられた埼スタの悪夢が蘇りかねない。マリノスからすれば、攻撃が終わった時にアダを捕まえられているか、そしてパスの要衝である東やロングキックの蹴り手の2CBの選択肢を削れるかがミソになりそうだ。

そんな

マリノス側:今シーズン最大の瀬戸際、求められる新たな得点パターン

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ああ、8月なんてなくなってしまえばいいのにーー。7月最終戦に鹿島へのダブルを達成しウキウキで夏に飛び込んだマリノスを待ち受けていたのは、地獄の4連敗だった。

どの試合も先制点を奪われ、持ち前の火力で追いつくものの勝ち越し点となると急にゴールが遠くなり、プレスを食らって迂回を強いられシュートは相手DFに当たり、隙を突かれて失点して、、、という焼き増しのような展開を立て続けに見せられると、そりゃ何もかも夏のせいにして逃げたくなる。しかも川崎との6ポインターを落とし、2つカップを落としたのだから、落胆するなといっても無理な話だ。

その原因は、飛躍的に伸びていくエウのスタッツに隠れている。とかく彼がキレッキレ、、、いやキレッキレすぎる。

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左サイドに移ってからのエウは贔屓目なしで無双状態。対面を剥がすのはお手のもの、外→中のドリブルからのチャンスメイクももはや職人芸の域。去年のベストパートナーりゅーたではなくかっちゃんが縦関係の相方になろうとお構いなし。なんなら今年の方がより絶対的だ。

だが、いかんせんマリノスはエウに頼りすぎた。特に神戸戦は彼を高い位置で攻め残りさせた結果、ボールを奪われた後かっちゃんが対面の飯尾や山川を1人で見る必要が生じたし、ボールを持っている時は外→中のコースを担保するためにも高い位置でサイドに張るタスクもあった。度重なるマルチタスクとワンオペ守備の果てに飯野とのかけっこを強いられ、取り返しのつかない3失点目の原因を招いてしまった彼だが、ちょっと責めるには酷な気もする。

エウ依存が高まった理由は、彼がキレッキレなだけではない。とかく中盤がマンツーマンで捕まりまくることもある。相手の中盤もピン留めされるので、エウの花道である外→中のコースが空きやすくなる。そこをエウが抜けてくると、どこか上手くいっているように見えてしまうのだ。相手DFからすれば「たぶん次ラストパス狙ってくるな」となるから守りやすいかもしれないのに、だ。
(この辺のマンツーしんどい話は過去記事で書いたのでご参照ください)

見た目には突破できてそうで、その実ワンパターンに陥りがちになってしまったマリノスの攻撃。暫定とはいえ川崎に首位を明け渡した今、いよいよ今年のシャーレのためにも次なる一手が求められる。鍵を握りそうなのは、逆サイドのWG、直近だとテルだろうか。

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エウの陰に隠れがちではあるが、テルも好調をキープしており、川崎戦では持ち前のスピードで同点弾を叩き込む以外にも低い位置でのボールキープなど対面の相手の逆を取る動きに磨きがかかっている。対面のLSBバングーナガンデ佳史扶は高い位置をとって輝くタイプ。彼の裏をとるスピードはもちろん期待したいが、何より自陣ゴール寄りの位置で剥がしてから一気に駆け上がることができれば、前回対戦のようにトーキョーのプレスの気勢を削ぐかもしれない。

またここ数試合怪我だけでなくマンツーマンで相手ボランチのマークに苦しんだ西村拓真にも攻撃の期待がかかる。

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神戸戦の同点弾のように速い攻撃の時に「もう1人のFW」として飛び込んでくる形はもう十八番になってきた。べったりついてきたマークに封殺されながらも1試合中1回以上は相手の嫌なところに顔を出してボールを受けるビルドアップ援助もできる。次に求められるのはバイタルエリアで相手の裏をかくようなプレーだろう。それこそ昨季までトップ下の座に君臨し続けたマルコスのようなコントロールショットや、サイドに流れてのワンツーなども増やしていきたいところ。今季指折りの成長株がさらにプレーの引き出しを増やせば、読みにくい攻撃をするマリノスが戻るかもしれない。

他にも待望のレフティWGヤン・マテウスの起用や、クロスとコンビネーションでの崩しと古巣潰しに長ける宏太兄貴の登用など、多様な武器は抱えている。問題はその武器からいかに逆算してボールを運び出すか、いかに相手を動かすか。どのパターンを使っていくかの算段がチームとして共有されれば、出しどころに困って無理目なパスを出してひっかかる危険性も下がるだろう。苦しみの8月を経たトリコロールは、次の「止められない武器」を見つけ収穫の秋を迎えるか。

おわりに

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あれほど上手くいっていたWGの交代を使った攻撃の味変作戦も数ヶ月のうちに対策を組まれ、今となってはまた別の手を模索するよう求められている。やはり簡単なシーズンも、簡単に得られるシャーレもないのだな、と思わずにはいられない。加えて完全にピークをマリノス戦に当ててきた神戸が見せた個人のクォリティの高さをテコにした勝ち筋や、浦和の底力は、アジアを勝ち取るために超えるべき壁の高さを痛感させた。それが国内クラブに思い知らされるのは余計に悔しいものがある。

けれど、

思い返せば、ここ最近味の素スタジアムでの試合は、どれもシーズンを振り返る上で欠かせないゲームばかりだ。2019では優勝争いのライバルとして不足を痛感させられ(でも試合後セレモニーのフサの神対応に泣かされ)、2020では苦しいリーグ戦の打開策を求めつつパギとの最後の試合を白星で飾るべくチームが一丸となり、2021では改めて今年は何かやれるかもしれんと確信をつかむゴールラッシュを見せた。そして2022年。「8月本当にしんどかったけど、でも9月の味スタからもう一度浮上できた、だから優勝できたんだ」そう言えるように、この試合は勝利を求めたい。

勝てていないから、閉塞感があるからと肩を落とし自分たちが積んできた14の勝ち星を疑うのも、追い上げてきた川崎に恐れて目の前の試合への闘争心を削がれるのもどれもお門違い。難局に直面してとれるかもしれないタイトルの心配をするのではなく、ここを超えた先に得られるものを想像して笑みすら浮かべながら飛びついていく。そんなトリコロールの姿をこそ、勇猛果敢と呼んで旗印にしてきたはずだ。

闇雲に恐れ膝を抱く?違うでしょ、そこは笑うトコロ。

<この項・了>

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