【幻想とじゃれ合って】2022J1リーグ第20節vs広島(H)【時に傷つくのを】

どうも。お市です。中3日続きで時間がない!週末には大阪で試合とか連戦は書き手もキツい!だから挨拶とか抜きの簡易版でサクッといきますよ!広島戦レビューはっじまーるよー!

スタメン

マリノスは…

  • 前節からの変更点はLCB(角田→エドゥ)、LSB(永戸→小池裕)、ボランチ(ジョエル→山根)の3人のみ。次第にファーストチョイスが固まってきたか、それとも5人交代の旨味を最大限活かす夏場の最適解か。
  • 小池裕太、山根陸の2人はちょうど3ヶ月前のアウェイ広島戦ぶりのリーグ戦先発。リベンジマッチに挑む。
  • ベンチには小池龍太が復帰。6/11に負傷して全治4週間だったはずなのでやや早め?
  • ケヴィンの清水戦試合前インタビューで「コンディション不良」と言われていたジョエルもメンバー入り。

広島は…

  • 4日前の前節からスタメンもベンチも変更なし。この連戦、2戦1セットで臨んでる?
  • 前回対戦で「お願いだからバテて欲しい」と思わせた新トラウマ枠の藤井はベンチスタート。代わりにマリノスキラー歴もそろそろ10年?年季の入ったトラウマ柏がRWBへ。
  • 天皇杯も合わせると中2,3日で挑む8連戦のうち5試合目。全ポジションでメンバー固定が進んでおり、とりわけ佐々木、塩谷は直近3試合フル出場中。

前半

前回対戦の成功体験やここまでの彼らのスタイルそのままに、広島はマンツーマンで人を捕まえる守備を敢行。
マリノスが自陣でボールを持ってきたときに、「俺は畠中にマークつくからお前はエドゥアルドに行ってくれよな!」とばかりに出足鋭くマリノスのCB陣にプレスをかけるベンカリファ、それに早々に呼応するように周りにいるマリノスの選手を捕まえる満田&森島の両シャドー(筆者はミッチー&司と呼んでる)は特に迷いがなかった。

前回のやり方に自信を深めた広島に対し、マリノスは前回とは違うところを見せにかかった。
山根(リク)が試合後に「どこにスペースが空いているかと、マンマークだったので“出して動いて”を続けるしかなかった。」(出典:ゲキサカ)と語ったように、マリノスの選手たちは何者かに急かされているかのようなスピードでパスを出しては動いてを繰り返した。けれどこの作業自体は前回対戦とも同じだし、マリノスの日常である。前回と違うのは、相手ゴールまで辿り着くまでにどこを空けるかを共有できていた部分ではないだろうか。今回で言えばサイドの裏と3バックの手前という泣き所が狙い目だった。

スキッベ監督をして「最初の5分を除き、速くボールを動かし、相手の裏を突く良いサッカーができている」と言わしめた「最初の5分」は主に左サイドのWB東、LCBの佐々木を釣り出したサイドの裏を狙った。

RWG水沼(宏太兄貴)を中心に、背後にいるRCB畠中(しんちゃん)とRSB松原(健さん)と、流れてきたトップ下の西村(たくま)やボランチの岩田(岩ちゃん)を加えた4,5人の水沼一派を形成。「おう野郎ども集まれパス回しすんぞ」とばかりに鳥かご状態を作り、広島のサイドを崩したシーンが散見された。
この時の宏太兄貴の貢献は見過ごされがちだがとても大きい。健さんが高い位置を取ったり、中盤の選手がサイドに流れたりするこの崩し方は、奪われれば即カウンターの危険を孕む。ちょっとパスが短くて受け手がターンできなかったりすればアウトだし、前方向に進むタイミングも間違えられない。ここ数戦宏太の兄貴がスタメン起用されているのは、(クロスという唯一無二の武器もあるだろうが)サイドで4人の鳥かごを作った時にミスしない巧さ、勘所を買われているのもあると思う。

その後は3バックの手前を広く空けさせたが、この中央のスペースではサイドから入ってきたLWGエウベル(エウ)が崩しの水先案内人となった。
右サイドや中盤でマリノスの選手が捕まっていて、かつ広島のRWB柏がLSB小池裕太(ゆーた)を見ている隙にドリブルで中へと入っていく動きが多かった。スペースの広さに関わらず寄せてきた相手を剥がせるエウだからこそ、空けた中央のスペースを「花道」にできるし、先制点のキッカケとなる塩谷を釣り出した動きのような仕事ができるんだろう。ゆーたがWGのような位置どりからフリーでヘッドを合わせられたのも、エウがロストせずに中央を運べたことに起因している。アシストした宏太兄貴ほど脚光は浴びないだろうが、エウの働きも無視できない。

ただし、「3得点のシーンは作りましたが、もしかしたら広島の方がチャンスを作ったと見えるかもしれません。」(出典:TRICOLORE+)ともあるように、前半は広島がマリノスを押し込める時間が長かった。このキッカケを主に作っていたのは、冒頭5分で水沼一派に鳥かごの刑に処されていたはずのLCBの佐々木とLWBの東だった。

まず佐々木は左サイドにいるものの右利きの選手なので、(マリノス側のゴールから見て)右サイドから寄せていっても彼の利き足の右足からのパスコースはちょっと遠くて消しにくい。
加えて東は上がりすぎずに「WGが見るの?SBが見るの?」という悩ましい位置をとった。ここでボールを受けたためRSBの健さんは東にチェックを行った結果釣り出される格好に。アップダウンを繰り返したりしながらもいざという時に立ち位置で相手を迷わせられる辺り、実に嫌らしかった。
そうすることで「大卒新人に自信を持たせることで有名なマリノスの最新例」こと満田とやたらボールを収めるおじさんベンカリファへのパスコースができてしまい、しんちゃんを筆頭にDFが背走を強いられる場面が多くあった。
プレッシングなどボール非保持の面で名を上げたスキッベ・サンフレッチェだが、ボール保持の面においても3バックの恩恵をうまく享受しているように思えたゲームだった。

後半

ビハインドとなった広島は「老舗トラウマ枠」柏に替わって「新生トラウマ枠」の藤井を投入。スプリント、クロス、ドリブル回数でリーグNO.1の彼に高い位置をとらせて仕掛けさせることにした。前回対戦でもゆーたに何度か勝っていた藤井を当てて、突破口を作ろうとする意図が強かったように思える。
彼になるべく高い位置を取らせるために、RCBの塩谷以下3バック+東が右にずれて4バック気味にもなるなど、奪われた後も計算づくの反撃策。現にハマって2点目を入れられるまでは藤井の突破からチャンスも作っていた。

ただ広島が得意のコーナーからもゴールが割れず、ロストしてからはマリノスが「じゃ、ここからは我々が攻めさせていただきますので」とばかりにボールを支配し始めた。さらにスプリント王藤井の担当窓口としてマリノスも宮市スプリント担当相(亮君)を対面にアサイン。彼ら2人の追いかけっこはさながら世界陸上の様相を呈すだろう、、、と思ってたら最初の両者の対決は亮君が圧倒的優位の状態で始まった。

たくまの「よっしゃああああああ!!!!」って奇声と岩ちゃんの「ナイスたくま!」って声がばっちり拾われてる

右サイドのRSB小池龍太(りゅーた)+RCBしんちゃん+ボランチリクでパスを回しつつ、相手の左サイドを引き出すマリノス。57分過ぎのここのトライアングルは実に巧かった。彼らのパス回しでまず東を釣り出すことに成功。
そのまま岩田→レオと繋ぐ。レオにはCB荒木がついていった(潰せればカウンターのチャンスなので行って当然ではある)のだがレオがここをかわしたので荒木の跡を埋めるべく塩谷はやや内寄りに立たねばならなくなった。
最後に亮君が藤井よりも敵陣ゴールに近い位置に立つことで、スプリント対決もより優位な形で迎えるように。かつゆーたが内側へ走って藤井に「宮市と小池(左)のどっちを追うべき?」とさせることに成功。新旧スプリンター対決にそもそも持ち込ませず、亮君のもう1つの強みである(余裕があれば)精度の高いキックを悠々と発揮できる環境はこうして整った。

このように流れを見てみると、2点目は「敵陣に引き付けられ、SB裏に流し込まれ、からのサイドチェンジ」と実にマリノスが今までやられてきた形に近い。上手くボールを動かしながら前がかってきた相手の裏をとって致命傷を与える、やられるとめちゃくちゃガックリくる得点パターンを綺麗に再現できた好例と言っていいだろう。

ラスト35分で2-0となると、あとは双方交代選手次第になってくるが、こうなると滅法マリノス向きの展開になってしまう。亮君はじめ、この後トドメの3点目のアシストを記録することになる仲川輝人、マルコスなど計算の立つアタッカーを立て続けに投入し、プレスとロングカウンターの匂わせができるためだ。Jサポ各所から「畜生極まりない」「ブルジョワか」「人の心とかないんか?」とご好評(?)いただいているのも無理からぬ話だと思う。
ここ数戦のマリノスは、過酷の一言に尽きるベトナム2次キャンプACLのグループステージなどの連戦で構築した多くの組み合わせをフル活用し、前半と後半でキャラクターを変えながら勝ち星を積んできた。その考え方自体は天野純(蔚山で元気そう)と宏太兄貴を入れてトドメを刺しにいった去年の連勝期と近いのだが、今季はより明確に繋ぎながらブロックを崩す前半で先制or相手の疲弊誘発、オープン展開の後半にスピードスター(主にテルと亮君のチーム30)を裏に流し込んでトドメ…という区分けがされているように見える。マリノスのハイテンポ、ハイインテンシティ、ハイカロリーなサッカーを日本の高温多湿な夏でも実行できるやり方を見つけ出せていると、今のところは胸を張って言えそうだ。

おわりに

苦しみ続けたマンツーマンという課題と戦い続けたマリノス。(連戦中の疲労があったとはいえ)リーグ屈指のプレッシングを誇る広島相手に「パスアンドゴーで引きずり出して殴る」「ショートパスが無理なら縦横に大きく振って殴る」「疲れてきたところをもう一回殴る」と理想的な展開ができたのは、課題克服への大きな自信となるだろう。

感情的なサポーターの視点で言わせてもらえば、前回対戦で苦しんだ結果序列を下げてしまったゆーた、リク、エドゥが雪辱を果たす好パフォーマンスを見せた点も実にエモい。とりわけゆーたは「燃えていた」らしいし、そういう個人としてリベンジを期す選手がチームのリベンジに貢献する様は、連続ドラマのようなシーズンを過ごすマリノス”らしい”光景だ。

また声出し応援が復活したことも大きかった。亮君が「鳥肌がたった」と語ったように、やはり選手も奮い立ち「いっちょやったろうやないかい」と思えるような雰囲気が作れたと思う。プレスの掛け合いスペースの奪い合いで体も頭も酷使するようなゲームだっただけに、チャントはもちろんひとつひとつの好プレーに歓声が上がる環境はやはり大事だったのではないだろうか。ていうかやっぱ点取った選手が両耳に手当てるポーズいいよね。。。

ここまで苦しみながらも積み上げてきたシーズン、せっかくなら最後はタイトルを小脇に抱えて大団円で締めくくりたい。その時はスタジアムで「遙かなる想いを吼える」ことができますように。

<この項・了>

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