どうも、「 #トリコロールな人生 のタグは時間が溶けるから小出しに見る」お市です。マリノスとしての30周年記念試合にこの企画を当ててきたのは、マリノス公式さん流石のファインプレーですね。
そんな記念試合の相手はアルベル監督を招聘して今年からモデルチェンジに取り組んでいるFC東京。去年8-0で叩いたあの時の彼らとはどうやら違うもよう。
実はここのところ2試合勝ちなしのマリノスとしても、こういった華試合を勝って首位追撃を再開しつつACLへ向かいたいところ。新たなスタイルのトーキョーはどんなチームなのか、そしてマリノスはどう打ち破るかを考えていきたいと思います。
トーキョー戦プレビュー、はっじまーるよー。
目次
ざっくりどんなチーム?
A. 「今の所は」安全第一。ボールを持ち続ける守備が特徴のチーム。
Embed from Getty Images数字と筋肉は嘘をつかないはずなので、直近のデータをふりかえってみる。
- 直近公式戦5戦4勝1分、リーグ戦での敗北は開幕川崎戦のみ。
- 7試合で失点わずか4、得点もわずか5。
- シュート:リーグ15位、30mライン進入回数:同12位、ペナルティエリア進入回数:同16位(出典:footballlab)
一時期は「新潟の教え子全部抜く」報道もあったアルベル・トーキョーだが、蓋を開けてみるとその政権交代は実に低リスクで漸進的なものだったと言っていい。
新しいサッカーに着手する、と聞くとマリサポな筆者なんかは、ポステコグルー政権1年目に「残留できますように」と震えながら近所の神社にお祈りした日々がフラッシュバックするのだが、今の所青赤のサポーターたちは同じ道を辿っていないようだ。ぐぬぬ。
ではなぜここまで失点が少なく、勝ち星を積み上げられているのか。
もちろん最後尾にいるチート級守護神スウォビィクのおかげでもあるが、自陣でパスを回し、ゆっくりでいいからなるべく多くの人数を敵陣に送り込もうとしていることが大きい。速攻の反対、いわゆる遅攻を励行しているのだ。この点はアルベル政権に変わって見られた大きな変化といえるのだが、「攻め込むのは全員で」精神は就任前のインタビューからも読み取れる。
「ヨハン・クライフが言っていたとおり、我々がボールを保持している限り、相手は攻撃ができません。一人ひとりがいいポジション取りをすることで、より良いポゼッションができれば、より多くのチャンスを作ることができます。攻撃において良いポジション取りができていれば、ボールを奪われたときに、良い形でボールを奪いにいける」
『ポジショナルプレーの核心は「全員で一緒に旅をしろ」 ペップ流を知り、バルサ要職を務めたアルベル新監督のFC東京変革案』https://number.bunshun.jp/articles/-/851321?page=2
「私の国ではそれを『全員で一緒に旅をしろ』と表現します」
ただ、昨季までのトーキョーの根幹は、長谷川健太監督が提唱した「ファストブレイク(速攻)」だった。パス本数は少なくとも、自分たちの立ち位置は整っていなくても、チャンスと見るやスピードに長けたアタッカーをガンガン雪崩れ込ませる。今とは真逆に近い攻撃をしていたのがケンタトーキョーだった。
もちろんチームにいる選手たちも大きく変わったわけではない。そのため相手を敵陣に押し込めることは、彼らが得意としていた広いスペースをスピードで圧倒する攻撃はやりにくくなってしまう。得点数やシュート本数が伸び悩んでいるのもそのためと推察できる。
今までの強さを損なってでも、新しい戦い方を実装中なのは2018マリノスと変わらないものの、その新しい戦い方が安全第一ゆえに失点も得点も少なめなのが、今のトーキョーと考えていいだろう。
何に警戒すればいいの?
A. 自陣で食らうショートカウンターと両WGの突破
Embed from Getty Imagesこのように徐々に遅攻を実装しつつあるトーキョーではあるが、やはりストロングポイントは独力でボールを奪えるインサイドハーフ(IH)コンビを全面に押し出したカウンターだろう。ルンバ系センターハーフ安部柊斗だけでも厄介だったのに、今年はそこにフィジカルお化けメーカーの青森山田が誇る最新鋭ハイエンドモデル、松木玖生もいる。ユース年代で数多のボール保持型のチームを葬り去ってきた勢いそのままに、プロでもボールを奪って1人でミドルをぶっ放したりしている。
事実、得点は敵陣でボールを奪ってからのショートカウンターを起因とするものが多い。中央に構えるボールハンター2名が前を向いた状態でボールをかっさらったらそれが合図。スピード豊かな前線のアタッカー達がゴールまでなだれ込む。また困ったことにこの2人とLSB小川にはミドルシュートもある。このプレスにハマって自陣で過ごす時間が長引けば、去年の8-0のしっぺ返しを手痛く喰らう羽目になる。
新基軸としてパスを多用しながら自陣からボールを安全に運び出すものの、一度押し込めば後は昔取った杵柄+ゴールデンルーキーの強みを出しながら得点の確率を上げていくのが今のトーキョーの理想型のように思う。
また、押し込む際には対面の相手を剥がせる2人のWG、アダイウトンと紺野和也が張っているサイドからボールを進めるパターンが多い。とりわけ紺野はアルベル政権で開幕戦以外は先発を勝ち得ている。低い位置からボールを運ぶドリブルも、ペナルティエリア付近で見せるキレのある切り返しも持ち合わせており、かつて「武南のメッシ」と呼ばれたのは伊達ではないと思える。
Embed from Getty Imagesクヴァは「行き先は風にでも聞いてくれ」といったキック精度だが、木本と森重(特に後者)は精度の高いフィードをつけられる。ゆっくり全員で進むトーキョーだが、あっさり安全にボールを進められる場合は話は別。遠慮なくロングキックも入れる。マリノスのプレスが上手くハマらないと彼らからWGへのフィードで前進を許しかねないので、プレスの際はサイドへの対角フィードも頭に入れておきたい。
マリノスはどうする?
A. 「隙間は使えるけど…」を超えて #ともにその先へ
Embed from Getty Imagesマリノスが一度押し込まれる時間もあるはずなので、陣地回復する手段を確保しておく必要がある。そのためようへや岩ちゃんが得意とする中長距離のフィードも欠かせない。フィードの受け手は前線の選手たちとりわけアンロペやレオちんといったCF、さらにはトップ下に入りそうなにしむー辺り。彼らにはボールを収めたり背後を狙って相手を押し下げるなど、味方に余裕をもたらすプレーも求めていきたい。
なんとかプレスをかいくぐっても、しつこいようだがトーキョーのゴールマウスにはクヴァ神ことヤクブ・スウォビィクがいるので、どうにか彼のタイミングをズラして点を奪う必要がある。
またプレスがハマらないと見るや即刻戻って城壁を構えるのもトーキョーの特徴である。そのため崩しきれないままシュートを撃つと、マリノスとしてはここ数節抱え続けた「繋げている感じはあるけど点は入らないしシュートはバシバシブロックされる」という苦しさが脳裏によぎりかねない。
上手くボールを動かしつつ、チャンスが作れるかのバロメータとして、相手のCBの死角に入れているかが挙げられる。木本、森重という 木と森て愛知万博のキャラクターか ボタニカルCBコンビは前に出て潰したりマンマークや身体を投げ出したシュートブロックは実に長けている。けれど、どんな守備職人でも一度引き出して背後に回れればこちらのもの。ボール目がけてやってくるプレスを逆手に取りつつ、彼らを動かすところまで持っていきたい。
その時鍵になるのがサイド、とりわけマリノスの左サイドである。
木本、長友の前にはWGのアダイウトンがいるが、彼にはなるべく下がって守備をさせたくなさそうに見える。相手を押し込むための槍として、攻め残りをさせたい。でもアダが抜かれたら誰かがチェックしなければいけないのでアモーレ(やや古)長友が前に出てアモーレ(物理)する他ない。そんな情熱的なアモーレの背中を、そっと優しい慈悲で埋めるのがアンカーの青木だったりする。
だが、青木は決してよーいどんのスピード勝負に強い選手ではない。なのでサイドに出てきた彼とエウやテルといったスピード自慢で突ければ、北條さんが言っていた「始末が悪い」状況をトーキョーに突きつけられるはずだ。昨季味の素スタジアムで見せたような、釣り出すサイド攻撃を再現したい。
隙間にクサビのパスが刺せたからと喜ぶフェーズは終わった。これからはより得点に直結するよう相手を狙って動かすポゼッションがどこまでできるか。外から1人ずつ芋づる式に引き出す、というボール保持のチームにとっての宿命に、ここで改めて満点回答が出せるだろうか。FZKM(古巣絶対◯すマン)水沼宏太が語った「積み重ね」が試されるゲームでもある。
おわりに〜30周年目も現状維持にあらず〜
マリノスで30周年、日産自動車サッカー部から数えれば50年の節目となる試合である。片足だけ乗り掛かってるのか、ずっぷりハマっているのかは人によるだろうが、マリノスという船の乗組員たちにとっては大切な1年となるのが今年であり、今回はそれを再確認する機会でもある。
だが、誤解を恐れずあえて言うのであれば、この記念すべき年も、試合も、通過点に過ぎない。
今年だけでなくその先の数十年以降も、「古豪」ではなく「強豪」「常勝軍団」として名を馳せる。そんな航路を今尚進んでいるからだ。
数年前まで新戦力選手たちは「歴史あるクラブ」とマリノスを評していたが、それ以外にこのクラブを形容する単語はほぼ無かった。今のマリノスへの魅力を語る選手はあまりいなかったように思う。
でも今は違う。新加入選手たちは口々に「近い将来海外へ飛躍するために必要なクラブ」、「魅力的なサッカーをするクラブ」とこのクラブを評し、昔ではなく今のマリノスに惹かれトリコロールに袖を通した。昔は強かった「古豪」から昔も今も未来も強い「強豪」へ返り咲こうとし始めた確固たる証だ。
そんな航路の途中で、今の状況にあぐらはかけない。2019のシャーレも、8-0の勝利も、何1つこの試合の勝ちを約束してくれやしない。それどころか足踏みをしている間に首位は遠のくし、積み重ねでトーキョーのように方針転換を図ったチームに先を越されかねない。
だからこそ、改善を続ける姿が見たい。現状維持はマリノスじゃない、そう胸を張って言えるように。30周年記念試合も、いつも通り勝利と課題を乗り越えた手応えの両方を求めていきたい。
<この項・了>