【青いハート抱えて】2021J1リーグ第32節vs札幌(H)プレビュー【どこまでも】

「まさかの(マンツー攻略)やれちゃう感じ?」

失礼しました。「今更OKAMOTO’Sにハマった」系マリサポのお市です。

さて、札幌戦ですね。アンジェとミシャというサッカーヲタクおじさん同士のイチャイチャが拝めるこのカードでしたが、片方の変態はスコットランドに旅立ってしまいました。なので巨漢おじさん同士の濃厚BLには触れず、サッカーの話でもしようと思います。

札幌へのふんわりした恐怖

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我々は忘れない。不発のゼロトップ、高嶺に削られてキレるマルコス、ルーカスにズタズタにされるブンちゃん、そして菅のトンデモミドルを。

ボール保持を掲げつつも「突っ張ることが漢のたった1つの勲章」とはとばかりに前進一択が続いたマリノスにとって、ガチのマンツー白兵戦を挑んでくる札幌には要所要所で煮え湯を飲まされてきた。崩しの要衝たるマルコスを封殺されるのもそうだが、SB裏を虎視眈々と狙う快速自慢のWB、シャドーはまさしく喉元に突きつけられた出刃包丁。お互い斬りつけ合って先に出血多量で倒れた方が負けみたいなゲームを繰り返しがちだ。

アンジェ政権以降の札幌戦の戦績は5勝4敗3分け(PK戦での勝利は引き分けとしてカウント)とほぼ五分。渓太の巣立ちやカップ戦のプレーオフなど節目にぶつかっては煮え湯を飲まされた思い出が多いため、過去の試合を思い出して胃痛がするナイーブなマリサポは筆者だけではないはずだ。

でも札幌戦って楽しい時もあるよね

我々は忘れない。天野純が左足アウトサイドで北の大地に虹をかけたこと、テルが止めようのない中央突破で三ツ沢の風になったこと、そして大然和尚の初出しバーサークアンパンマンを。

刺し合い上等のゲームになりがちなカードなだけに、競り勝った時の快感はすごい。お互いオープン展開をコントロールするよりオープン展開に乗っかって殴った方が効率的なチームなので、このカードはさながら矢吹丈対力石徹ばりのノーガードの撃ち合いになりやすい。

オールコートマンツーマンを採用するチームが少ない理由の1つに、「シンプルにクッソ疲れる」というものがある。たとえ札幌の選手たちが走りきり1vs1に長けていても、アスリート相手に90分鬼ごっこを続けるのはかなりキツい。上手く疲れさせきれれば、今年のアウェイゲームのように2021マリノスお得意の75~90分の”ご褒美タイム”を享受しやすい相手なのも確かだ。

ドリブラー天国 x ロングキック x 「接着剤」

では今の札幌はどんなチームか、というと、「11人の過半数が走れるドリブラー」なチームだ。
オールコートマンツーマンの名の下に1人1殺の逃走中を敢行する姿勢に変わりはないが、ハンターがだいたいドリブラーなのが今の札幌。前節シャドーには小柏、金子が入り、WBにはルーカス・フェルナンデス、青木亮太、さらにはボランチに若い頃はアタッカーだった駒井、3バックの左にはルヴァンのミドルでマリノスの夢を粉々に破壊した菅がいる。よく走るし、対面の相手をドリブルで攻略できる選手が11人中6人を占めたわけだ。

前節ガンバ戦はそれがどハマりした。

CFのトゥチッチはあまり動かずでんと構えているが、あとはおおむね札幌市在住ポジション不定の男性ばかりである。最終ラインでボールを持ったらごちゃごちゃせずに(主に向かって右にいる)相手SBに向かって蹴飛ばす。丁寧なビルドアップより大雑把でもいいから前のドリブラーたちに届ければいい。大抵のSB相手ならルーカスが競り勝ってくれるし、仮に相手ボールになってもお得意の鬼ごっこマンツーマンで捕捉して相手ゴールに近い位置でボール奪取できるからだ。そうすれば、後はアタッカーたちがワンツーなりドリブルなりで破壊し尽くして、はい、5-1いっちょあがり。

また厄介なのがこの蹴飛ばすロングキックがいちいち的確なところである。3バック中央の宮澤、ボランチの高嶺、さらに言えば「ギリギリクリアかパスかわからない」くらいのロングキックを蹴らせたらJ随一のGK菅野と四方八方からドリブラーがたむろするサイドめがけて蹴ってくる。また自身も汎用人形対ブンちゃん決戦兵器であるRWBのルーカスの低く速いサイドチェンジも秀逸。プレスをかけて出元を封じるか、サイドに手厚めのサポートを入れる必要がありそうだ。

こんな風に札幌はボールを持たずに相手に持たせ、ミスを誘発させ、ショートカウンターを乱発してこじ開けるチームだと筆者は見ている。「カウンタープレッシングに勝るプレーメイカーなし」というクロップの言葉を体現するかのようなゲームを見せられるピーキーで破壊的なチームである。

とはいえ「アタッカー諸君狂いたまへ」と好き放題させすぎるとちょっとしたイメージのズレで攻撃が失敗してしまう。ここを成立させるために粉骨砕身しているのがボランチの駒井だ。

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今や最終ラインも任されるベテランだが、若い頃は2列目の選手だった彼が、「昔ヤンチャしてたけど今は若いバンドの成長をあたたかく見守るスタジオのおっちゃん」のごとく若いアタッカー達のサポートに勤しむ。

またボールを前進させる主な手段が宮澤、菅野らのロングキックになりがちな札幌において、自陣からヌルヌルとボールを運ぶ駒井は貴重な存在である。昔とった杵柄とばかりに運ぶ彼の姿は、お世話になってるスタジオのおっちゃんがギター弾いてるの聞いたらめっちゃ上手かった的な感慨深い印象を与える。

時にはサイドの崩しのヘルプから最終ラインとアタッカー達を結ぶ役割までカバーする背番号14の存在は注視すべきだろう。

あと7試合を走りきる新たな最適解へ

対するマリノス、前節湘南戦は青息吐息ながらも久々に勝利。
最終ラインまではパス本数が多すぎるけど、敵陣入ってからロストするまでが早すぎるため「よっしゃ攻めたろ」の姿勢を取りきる前にカウンターを食らう、、という近頃の悪癖はまだ改善されていなかった。だが後半は前線のアタッカー陣に「落ち着け、落ち着け…グッボーイ、グッボーイ…」とマスカット監督が声をかけたのかロストまでの時間が少し伸びて丁寧な崩しから相手を追い詰められるようになった。傍目から見ればジキルとハイドのような様変わりっぷりだったが、メンバーを変えずして修正まで持ち込めたのは確かな収穫だった。

とはいえ前半のパフォーマンスの通り、ボールを持った時に攻めのスイッチが上手く入れられない課題は依然未解決である。そのため、「札幌式オールコートマンツーを打ち破る」という点もさることながら、「そもそも自陣からの前進をどうするか」という課題に対するアプローチも求められる。

そこでマスキーことマスカット監督はこの中断期間で諸々の修正に着手。水沼宏太のトップ下など、既存の起用法に囚われないアイデアがいくつか生まれたが、まず初めに報じられたのが中盤の構成を正三角形△から逆三角形▽に変えた4-1-4-1のオプション導入だった。

長らく使い倒してきた「マルコスシステム」(マルコスをトップ下に置いて彼の創造性をしこたま引き出す正三角形の形)から脱皮しようとしているとも観て取れるが、最大のメリットはサイドでの崩しに3人目が関わりやすくなることだろうか。今までの4-2-3-1はWG、SB(例:エウベル、小池)にボランチの片割れ(例:喜田)が絡むかマルコスに流れてもらうなどが主だった。3人目が流動的なのはいいが、ボランチが守備負担を考えて出ていきにくい場面があったり、マルコスにべったりマークがついていると相手選手を引き連れかねないデメリットがあった。ここにIH(インサイドハーフ)を恒常的にSB、WGと絡んでパス回しができるように仕向けると、2019でもちらほら見えていたサイドでのワンツーで小気味よく崩していく攻め方が実現できる。

ネックなのは俗にいう「アンカー脇」と呼ばれる、逆三角形の後方の頂点を務めるアンカーの選手近辺のスペースだ。ここを埋める手立てがなければ、カウンターの温床になりかねない。アンカーを務めるであろう喜田名人かタカの手腕が問われる。

仮に4-1-4-1を使った場合、間違いなく輝くと筆者が見込んでいるのが、なべここと渡辺皓太だ。

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相手に囲まれてもその場で旋回してプレッシャーをかわせるテクニック、90分攻守に絡み続けられるスタミナ、そして何よりサポですら「えっ、いたの?」と思わせるゴール前への意外な飛び出し。相手ゴール前で違いを見せるマルコスの仕事と自陣で攻撃のスイッチの入れ時を探るボランチの仕事、その半分ずつを求められるIHのポジションならば、なべこはボランチで起用された時よりも持ち味を存分に活かせるはずだ。

東京五輪のメンバー入りをかけたゲームでは納得のいくパフォーマンスができず涙を流し、序列を覆す大チャンスだった先の横浜FC戦では退場してしまいがっくりと肩を落としうなだれていた。4-1-4-1だったとしてもマルコス、天野が優先的に起用されるかもしれず、ベンチから出番を窺う可能性もある。だが悲しみの時間に終止符を打ち、はしゃぐようにサッカーを楽しむなべこが見たい。去年のマネーフォワードDAY名古屋戦では決勝点を挙げヒーローとなった背番号26がまたしても輝けば、彼がマリノスの新たな最適解のキーマンになるかもしれない。

また、このところあまりゴールに絡めていないエウベルと、彼を支える相棒小池龍太の右サイドコンビも札幌戦の鍵になりうる。

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対面は菅、青木、小柏とスピードとドリブルに長けたメンツがずらりと揃う。マリノスとしては彼らがりゅーたを2vs1で攻略していくシーンは避けたいので、むしろ右サイドコンビで彼らを押し込むくらいの圧力で攻防を制したい。チームの崩しの軸でもある2人だったので負担も大きく、アウェイ名古屋戦あたりからは疲労の色も見え隠れしていた。その中でテルが湘南戦でアシストを記録し完全復調をアピール。エウとしては休養明けのここで改めて自分の実力を証明したいところだろうし、そのためにはりゅーたとのコンビネーションが欠かせない。マンツーマンで対応しにくるのであれば、それだけ1vs1の局面は増える。チーム随一の突破能力を持つエウをいかに楽な状態で対面の選手とマッチアップさせるかは、1つのキーポイントになりそうだ。

どうせなら楽しみ尽くせマネフォDAY

意図せずして5・7・5調で友蔵心の俳句みたいになってしまったが、筆者の偽らざる本心である。スポンサー様をヨイショするわけではないが、マネーフォワードさんの弊クラブへの入れ込みっぷりはかなり異質だと思う。おそらく世界広しと言えど、ここまでクラブを好きになってくれて、サポーターと同じような温度で接したり手を尽くしたりしてくれる企業はほぼいないだろう。

今回の横浜駅の広告に書かれたマネーフォワード社員の皆さんのコメントに目を通すと、ちらほら「マリノスのおかげでまたサッカーを見ようと思えた」とか「一緒に盛り上げていきたい」とかこっちの涙腺が緩んでしまうようなことが書いてある。また単なる「融資してくれる企業」としてではなく、「どっぷり沼に浸かった同志」として久々のホームゲームを楽しいものにしてくれようとしているのがSNS越しでもヒシヒシと伝わるのも嬉しい。つくづくサポ冥利に尽きることをしてくれる企業だなと思える。やはりこのスポンサードはエポックメイキングなシナジーで新たなバリューをアウトプットし得るアライアンスなのではなかろうか(メガベンチャーを意識した精一杯の横文字推し)…

ともあれ、久々のホームゲームは打ち合い必至のお祭り試合が予想される。どうせ楽しめるような仕掛けを作ってもらったなら、四の五の言わずに徹頭徹尾楽しんでいきたい。スポンサー様含む関係者各位と喜び合える勝利という結果と、次につながる最適解へのキー探しの2つを欲張って求めてほしい。

だんだん日常が帰ってきつつある今、マリノスファミリーが待ち焦がれた青い天国のような楽しい週末も取り戻したい。

<この項・了>

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