【さぁ始めよう】2021年J1リーグ vs徳島(A)プレビュー【もう止まらない】

ポカリスエットつながりの選曲です

はじめに

どうも。「Jリーグチケットで『座席を選ばずに購入』を押すとだいたい最前列付近になる」系マリサポのお市です。次こそ俯瞰厨らしい席をとりたいです。

そんなことはどうでもいいんです、マリノスの話です。
アンジェ・ポステコグルーが去り、HONDA FCに負けて天皇杯を落とし、札幌に負けてルヴァンを落としと踏んだり蹴ったりだったマリノス。このままズルズルといってしまう危険性もありましたが、前節は難敵鳥栖を相手に見事なクリーンシートで勝利。殴り合いに持ち込めばJリーグ最少失点のチームも倒しきる火力があることを証明しました。

次の相手はスペインのかほり漂う昨年のJ2覇者徳島。
順位だけ見ればマリノスは2位、徳島は14位ですが、油断は禁物。前回対戦は前田大然の山賊プレスによって得た虎の子の1点をなんとか守って勝ったことを忘れてはいけません。
そんな徳島は今どういう状況に置かれていて、またどんな戦い方をマリノス相手にするのか。そして、それに対してマリノスはどう出るのか。プレビュー筋が衰えた身ながらつらつら書いていこうと思います。

徳島戦プレビュー、はっじまーるよー。

プレイバック前回対戦(◯1-0@三ツ沢)

今シーズン初顔合わせは辛勝と呼ぶべきゲームだった。
幸先よく前田大然の十八番山賊プレスから先制したものの、そこから先はボールを「持たされる」格好となったマリノス。対する徳島は効果的にカウンターを浴びせ、後半最後の方になると188cmのエースストライカー垣田を投入。彼に当ててマリノスのハイライン裏を突く策が実に厄介だった。
SofaScoreのモメンタム(どれだけ攻勢に出ているかを毎分ごとに可視化したもの)を見てもわかるように、随所に徳島の時間があり、スコアが変わってもおかしくないゲームだったことがうかがえる。

このゲームで徳島が互角以上にマリノスと渡り合ったのは、バランスを崩さずに守る時間帯と、思い切ったプレスを敢行して奪いに行く時間帯を使い分けたからだと思う。
ボールを保持してじっくり攻めたいチームというパブリックイメージから逸脱した守備(ボール非保持)での強さだったが、後半はこれが奏功してマリノスの弱点をあぶり出す結果となった。
その辺はヒロさんのレビューを読まれたし(丸投げ)

徳島の現状〜ポヤトス・バージョンは建築中も〜

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三ツ沢での辛勝から早や3ヶ月、お互いタッチライン側に立つ指揮官が変わった状態で再戦を迎えることになった。

徳島のベンチに立つのは、ダニエル・ポヤトス監督。レアル・マドリーのアカデミーで指揮を執り、アトレティコ・マドリーで分析スタッフまで経験したという、履歴書を見ればビ◯リーチも真っ青の若きスペイン人指導者だ。

しかし、現在の戦績は芳しくない。以下はリーグ戦での戦績を比較したもの。

この通り、ポヤトス政権下でのリーグ戦での勝利は5/15の広島戦(◯1-0)のみと、甲本ヘッドコーチが暫定指揮していた頃よりも苦しい状況が続いている。また複数得点はリーグ戦・ルヴァンカップともになく、天皇杯の高知ユナイテッド戦(◯2-1)のみとゴールが遠いのも苦しい。

前節東京戦の敗戦のあとには、徳島のバンディエラにしてピッチ上の監督あと筆者が個人的にすごく好きな選手であるボランチの岩尾憲が辛辣な言葉でチームを戒めた。

(ビルドアップについて問われて)
後ろの選手にはスタッフが映像も交えながら熱心にアプローチしていたので、2~3日でやってきたものではなく、もう少し時間をかけて準備してきたものです。なので、もう少しいい反応を示してほしい部分であります。

とはいえ、これが現実というところでは、トレーニングをしていかなければいけないですし、100回やって1つも覚えていないようでは、練習している意味がありません。後ろの選手だけではなく、一人ひとりの選手がしっかり頭を動かして少ない時間の中で自分のものにするということを理解していかなければいけないと思います。

Jリーグ公式サイト

ここまで上手くいっていない理由の1つに、似ているようで異なる枠組みを導入していることが挙げられる。言い換えればリカルド期と各ポジションに求められる素養が異なっているのだ。
ポヤトス監督はよりオーソドックスな4-3-2-1を志向しているようで、CBにはビルドアップ能力よりも相手FWとやり合う強さを、ボランチにはボールテクニックよりも様々な場所に顔を出す能力を、SBには大外のレーンで脅威となる武器(クロス等)を求めている風に見受けられる。
その証拠が、名古屋戦で0-0ドローに持ち込んだDFライン・ボランチコンビの固定だ。

いかにもブラジル人ザゲイロといった感じのカカと、マリサポにはおなじみのドゥレ隊長のボディーガードのようなコンビがCBに構え、SBは右に岸本、左にジエゴ。どちらも大外からのクロスやフリーランで相手ゴール前でも仕事のできる選手だ。そして岩尾の相方となるボランチは小西や藤田譲瑠チマではなく、中盤で潰せる鈴木徳真が起用されている。GK上福元、CF垣田を加えたこの計8名は、前節東京戦に至るまでリーグ戦で継続起用されている。

キャンプも行えず、落とし込みを実施する時間もあまりない中、まずはバックラインから人選を固め、連携を深めつつ練度を上げたい、というメッセージが見え隠れしている。マリノス戦でもここはいじらずにやってきそうだ。

とはいえ、人を替えることで指揮官の理想が叶うかというとあながちそうでもなく、要所要所に不足が見られるのも事実。たしかに1対1では頼れる守備者たちも、攻撃(ボール保持)の起点としては心もとなかったりする。現に東京戦はそこを突かれて失点している。

だが東京戦の徳島は、失点した後に取り返すアクションがなかったわけではない。
「後半はトレーニングしてきた形が見られた」とポヤトス監督が語るように、新しいビルドアップのパターンを見せて主導権を握った。ボランチの岩尾(たまに鈴木)が降りて3バックになる「サリーダ・ラボルピアーナ(決して小洒落たパスタの種類名とかではない)」がそれだ。
「安心と信頼の岩尾」が最後尾でCBたちのヘルプをして後方のボール回しが安定し、かつ両SBを高い位置に押し上げることに成功。これでSHが内側に絞って中央を上手く使えるようになり、後半は相手陣地に攻め込む回数を増やせた。

このように、ポヤトス流が馴染むまでの工事期間を迎えているようなチーム状況だが、ビルドアップを中心に徐々に改善の兆しが見えてきていることが窺える。

マリノスはいかにして戦うべきか

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まずは課題でもありつつ構築中のビルドアップは狙ってもいいだろう。
徳島のビルドアップは、「なるべくカウンターのリスクを減らすように」という印象が強い。基本はショートパスをつないで徐々に陣形とボールを相手陣地に押し込んでいくのだが、使えるとみるやGK上福元やLSBジエゴを中心とした面々からロングボールを使ってくる。パターンとしては大きく分けて3つ。

Aがもっともやり慣れた形らしく頻出。Bはロングボールだとしても回収できる目処があるならヨシ!な感じなので、割と使う。Cが前述の東京戦で出してきた新機軸。相手を自陣に引き込んで裏を使う姿は大分に近く、割とオープンになる。

注目したいのは、どのパターンでもRSB岸本が高い位置(特に相手WGの裏)をとっていること。

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高い位置をとっているからと単なる縦突破香車タイプと思ってはいけない。GK上福元からのボール(余談だが上福元はSBへの中距離浮き玉パスを狙いたがる)を収めたり相手に競り勝ってマイボールにしたり、ビルドアップの出口になれる選手である。中央に空いたスペースがあればボールを持ち運んでそのまま相手の守備陣系を狂わせる賢いプレー選択もできるので、逆サイドの「リアル蹴っとばし小僧」キックに特徴のあるLSBジエゴより派手さはないが野放しにはしたくない。

反面、岸本が大外で高い位置をとるため、CBとの間隔が空いたり背後が空いたりするケースがある。

岸本の侵攻を防ぎつつ、その裏にLWGの前田大然が入れたらマリノスとしては理想的な流れになりそうだ。

また、前回対戦の文脈からいくと(後半だけなど時間限定かもしれないが)徳島が前からプレスをかけてマリノスに「ボールを持たせる」やり方も採用しそう。ドゥレ隊長はあやしいが14番CBのカカはカバーリングもできるため、シンプルに垣田大作戦の後など、ある程度押し込んだ後なら採用できそうだ。
マリノスとしては、鳥栖戦ではあまりハイプレスはかけられなかったので目につかなかったが、ここはなんとしても剥がしたい。GK高丘を交えて数的優位を作るとか、降りてきたオナイウやマルコスを活用するとか、LSBジエゴが人への意識が強いのでエウベルで釣ってギャップを作るとか、やれそうなことは少なくない。徳島同様マリノスも自陣1/3からの脱出方法を見つけ出したいところ。

おわりに〜とらぬ狸の皮算用にならないように〜

前節の鳥栖戦は内容もよく、難敵相手のクリーンシートでの快勝劇だったため忘れがちだが、負けでもしていたら5位に転落する恐れがあり、優勝戦線から遠のいてしまいかねないゲームだった。ここをきっちりとって順位を2位に押し上げ、カップ戦2つを連続で落とした地獄の1週間からの流れを断てたのは実に大きい。

そうなると「川崎より試合数が4少ないから、実質勝ち点+12して…」と計算したくなるのがファン・サポーターの心情だが、チームとしては愚直に1戦1戦を勝ち続けるのみ。終盤の末脚で差し切って優勝した2019年も、最後の連戦を1つずつ勝ち切ったからこその戴冠だった。

徳島はポヤトス監督のやりたいことと選手たちの中でさすがにまだズレがあり、補修工事中ではあるものの、岩尾を中心とした技術で剥がす巧さが損なわれたわけではない。マリノス戦で最適解を見つける可能性もあるだろう。

油断はせずに、それでも粛々と順位どおりの力量差を証明して勝ち星を持って帰ることが、首位に居座る川崎への最大のプレッシャーになるはず。
前回は化かされかけた狸を、今回こそはぬかりなく仕留められるか。内容と結果を両立させた勝利を飾り、復調したチームの強さを証明する一戦としたい。

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