どうも、「面と向かって『オナイケおじさんってなんですか?』って聞かれると答えに詰まるオナイケおじさん」お市です。いわゆるひとつのネットミームです。静観いただきますようお願いいたします。
「アタッキング・フットボール」という屋号を掲げて久しい我らがマリノス、いよいよA代表と五輪代表候補にそれぞれ1人ずつストライカーをひったくらr…招集されるまでに相成りました。「クソうざプレスの使い手」「俳句スキルをすべてアジリティに変換した正岡子規」こと前田大然と、追加招集でA代表入りしたオナイウ阿道の2人です。
今でこそJ1の日本人選手で最速の2桁ゴールを記録するなどスターダムを駆け上がっている感のあるオナイウ阿道ですが、覚醒したのは割と最近で、3年前にいた山口での爆発がキッカケだったと記憶しています。
そんな山口時代のオナイウを知る貴重な資料が、山口サポーターのジェイさんのnoteです。
今回はこのジェイさんのnoteに記された山口時代を踏まえて、いまのオナイウ阿道はどんな選手なのかについてやかましいほどに語っていこうと思います。なお、私はついつい以降の文章で彼のことを「オナ」と呼んでしまっていますが、クラブ公式の愛称は「アド」です。くれぐれもお間違いなきよう。
目次
①ベースライン:身体能力が半端ない
ここは山口時代と変わらず。ちょっと高いかなというクロスも高い打点で合わせる。180cmとCFにしては特別大柄なわけではないが、最高到達点は高いし姿勢がブレないので滞空時間は長く感じる。体幹のなせる技か。
あと前田大然や仲川輝人といった面々に比べるとトップスピードがあるわけではないが、彼らに追いついてゴール前に駆け込むくらいの速さも持ち合わせている。急加速・急減速もできるので、後述する駆け引きを行うベースとなっている。
役割上マリノスでミドルを撃つシーンは少ないが、シュートは振りがコンパクトで速く、パンチがある。ただ、狙いすましたコントロールショットみたいなのは未実装。
②チャンスメイク:ポストプレイは得意ではない → かなり上手くなった
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山口時代はどうやらポストプレイが上手くできていなかったようだが、マリノスではチーム屈指の背負えるアタッカーである。しゃがみ気味に相手の前に入ってから伸びて背中と尻で相手を押す、腕で相手を抑えるなど、細部に巧さが光る。これは今年からトップチームに入った大島秀夫コーチの教えが大きいらしい。
後ろからの相手を無力化するポストプレーのスキルを使いつつ、オナはよくワンタッチで周りにパスを出す。それができるのも、パスを出せる味方が周りにいるタイミングでパスを受けているから、という点が大きそうだ。現にマリノスではトップ下を任されることもある。(どーーーしてもゴールをこじ開けたい時など)それは周りを使えるということ、いつゴールを背にしてでもボールをもらいに行くかなどを考えられていることの証左といえよう。
ただしボールタッチが明後日の方向にいくこともあるが、それはだいたい疲弊しきった時のサインである。ビルドアップが上手くいかないからと酷使したときに起こりやすい。
③ゴール:シュートまでの駆け引きもだいぶ上手くなった
Embed from Getty Images去年と今年を比較するとゴール数は4から10と急増しているが、その最たる例(だと筆者が勝手に思っている)が動き出しと周りのパサーとの一致。元からマークを剥がすのは上手いと思っていたが、今年は輪をかけて優秀。
例えばこのシーン。0:09で振り切られる相手マーカーの視線がどこにあるか気にして見ていただきたい。
図解するとこうなる。相手の視線がボールに移り、マルコスが出せそうになった瞬間にキュッと方向転換して相手の背後を取っている。こうされると相手としてはオナが目の前から「消えた」ことになる。パスのボールは見えるけれど、オナは死角にいて見えないので対応できず、パスをオナに渡る前に刈り取るしかなくなる。
一方のオナは相手にまとわりつかれることなくゴール前に到着できる。このシーンもマルコスのパスが絶妙な長さだったので、GKをかわして悠々ネットを揺らせた。いわゆる「マークを剥がす」動きだ。

余談だがこの一度相手の視界にいてから急に死角に消える動きのことを、横文字ではプルアウェイという。ゴールシーンを見返す時に注目していただきたい。見つけた際には「今のはオナイウがプルアウェイをしたのが良かったね」などと口走れば、ご家庭でも簡単にサッカーわかってる風を装える。サッカーヲタクが家にいれば鼻息荒く話しかけてくるはずだ。
また縦方向へのパスへの抜け出しもさることながら、横からのパスを受けるまでの準備が本当にうまい。
こちらも実際のゴールシーンを例に見ていきたい。とりわけ0:05あたりから、右サイドでボールを持ったエウベルとの関係性に注目してみていただきたい。
図解するとこう。

エウベルがドリブルを仕掛ける前(0:05あたり)はそのままパスを出してもらえるよう、マーカーとのかけっこの準備をしている。だがエウベルが突破してその線がないとみるや、パターンBとしてまたしても死角をとってマーカーを剥がし、また別の位置でボールを引き出している。言い換えればわずか数秒の間に自分がシュートできる位置(エウベル視点で言えばパスを出せる位置)を2回作り出しているのだ。サカナクションの新宝島ばりに次とその次とゴールをとれる位置を取り続ける丁寧丁寧丁寧な仕事ぶりができるというわけだ。
こうした細かな動きを可能にするのがいわゆる身体のキレであり、急に加速したり急に止まったりする能力が必要だ。天与の賜物ともいえる筋肉の瞬発力がオナの駆け引きをより際立たせていると言えるだろう。
恵まれた身体能力にあぐらをかくのではなく、それをフル活用するマーク外しのテクニックも使ってゴールを奪う。身体能力だけ、もしくは剥がすテクニックはあるけどスピードが追いつかないなど、片方だけできる選手は多くいるだろうが、ハイブリッドで兼ね備えているのは「点取り屋・オナイウ阿道」の大きな強みだ。
おわりに〜ヒーローは遅れてやってくる〜
このように、ベースとしての身体能力、ポストプレーからのチャンスメイク、マークを剥がしてパスに合わせるゴールへのスキルとFWに必要な三拍子をオナは兼ね備えている。まだ簡単なシュートが枠外に行ったりというツッコミどころはあるものの、日の丸を背負うに値する選手にまでなったと贔屓目抜きでもいえる。
思い返せば2016年のリオ五輪も、オナは後からバックアップメンバーに追加された。しかし結局出場は叶わず。そこから浦和を出て山口、大分と流れてフル代表に初招集されてもまたしても出番はなかった。
そして今、横浜のトリデンテ(スペイン語で三叉の意)の頂点を務めるまでになったオナは、念願のフル代表デビューを果たす。今回もまた、後からメンバー追加は後からだった。
主役とは呼びがたい扱いを受け続けたここまでだったが、今回は違う。大エース大迫・ハンパナイ・勇也の負傷も相まって主役の座を自ら引き寄せられる位置にいると言っていい。セルビア代表戦の45分ではポストや駆け引きの妙を存分に見せつけた。あとは「幻の」などと余計な枕詞のつかない正真正銘のゴールを決めるだけ。
「惜しい」という評価も、結果で賞賛に変えてきた。
余人には難しいことかもしれないが、すでにマリノスでやってきたことだ。オナ、行け。