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はじめに
どうも。ワールドカップ期間で朝型生活になったお市です。
普段はマリノスのことを中心に書いている弊ブログですが、ありがたいことにこちらの企画、JAPAN ANALYZING FESTIVAL ’26にお呼ばれしました。
ワールドカップ同様、凄まじい豪華キャストが顔を揃えております。
ほかの試合も含め素晴らしいアウトプットが続々と寄せられていますので、ぜひ上記ポストから
そんな豪華キャストの末席を汚す私ですが、担当試合はグループB第2節スコットランドvsモロッコ。
ヨーロッパ予選を奇跡ともいえる勝ち抜け方で抜けたスコットランドが、本大会随一のダークホースたる強豪モロッコに挑む形でしたが、結果は0-1でモロッコの勝利。前半2分のサイバリのゴールでリードを奪ったモロッコが危なげなく勝利を収めた、という印象のゲームでした。
しかし、私はあくまでスコットランド贔屓なので、「モロッコつよいね、チャンチャン」では終わらせません。
しつこく、そして当て付けがましく、「いーやスコットランドが1点差まで肉薄したんじゃ!」と叫んでいこうと思います。
それではスコットランドvsモロッコのふりかえり、はっじまーるよー。
前半
俺らのプランが開始1分で瓦解した件(電撃文庫ラノベタイトル風)
スタメンはこんな感じでした。

ブラジル相手に横綱相撲をとって士気高いモロッコは前節からメンバーを変えず。
まさにこの試合で勝ち点3を確実に取っておくべく、手加減なしのフルメンバーで挑むといったところでしょうか。
対する我らがスコットランド、奇策に打って出ました。
最終予選では1回もやらなかったロバートソンとティアニーのLSB同時起用です。
EURO2024以来の5バック採用か?と匂わせましたが、蓋を開けてみれば4バックはそのまま、ティアニーをLWGにしてきました。モロッコの最大の武器である右サイドの被告人 RSBハキミとRWGディアスを中心とした攻撃への対応策でしょう。
なるべく0-0の時間を長引かせつつ、カウンターの機を伺うというプランの上で、相手の強みを潰すための人選をしてきたといえm…
って感心している間に失点しました。しかも一番警戒しなきゃいけなかった右サイドのディアスからCFサイバリのホットラインからです。一瞬ワールドカップを見ているのにJリーグヲタク特有のこの画像が浮かびました。

※まだ1失点しかしてません
しかしモロッコ、やはり強い。
見事な裏抜けからわざとらしいほど目配せしてクロスを匂わせてニア抜きを見せたCFサイバリ、彼の動き出しにピンポイントのパスを供給したRWGディアスもさすがでしたが、彼らのいる右サイドに展開する前も秀逸でした。
自陣でボールを持った時に左サイド(スコットランドから見ると右サイド)に人を集めてから使いたい右サイドに展開する、いわゆる「左で作って右で刺す」という流れでしたが、これが実にこなれている。

LSBマズラウィがCBの位置まで降りつつ、さらにCMFブアディまで下がってスコットランドプレス部隊に2択を強いるのは後ろに重いかと思ったのですが、これでスコットランドが全体的にモロッコ左サイドに寄せられる格好に。
こうしてできたスペースをRSB被告人ハキミが高い位置を取ることでRWGディアスにパスを出すための、CFサイバリに裏抜けをするための時間・スペースの自由を与えたのが印象的でした。
少し低めのブロックを組みつつカウンターの機を伺う、というプランは、なんと1分弱で吹っ飛んでしまいました。
この試合を観ていた人はTLにも何人かいらっしゃいましたが、朝7時に磯野波平顔負けのブチギレ芸を見せたのは私くらいでした。
落ち着け、まずは深呼吸

開始1分でビハインドを食らって目論見が崩壊したとしても、試合は続きます。私も「うろたえるな、思考を止めるな」とロイ・マスタング大佐の言葉を思い出して自分を奮い立たせていると、スコットランドも立て直すための手を打っていました。
前半の CM強制ぶち込みタイム ハイドレーションタイム明けの第2クォーターとも呼べる時間あたりから、OMFマクトミネイとCMFクリスティの立ち位置が変わり、RWGマッギンが真ん中に入り始めました。
まずは奪ったボールをマクトミネイ→マッギンとつなぐための仕組みを作って、完全にボールと試合を掌握しているモロッコから少しずつ主導権を取り返そうという魂胆かと思います。
またモロッコがボールを持った際はCMFクリスティがCBからのCMFブアディへのパスコースを消し、少しずつ攻撃をサイド(特にモロッコ右サイド)からのものに絞ろうとしていきました。
こちらは元々準備していたLWGティアニー&LSBロバートソンの2人によるど根性マンツーマン守備エリアにモロッコを誘導する狙いがあったかと思います。
たしかにRSBハキミとRWGディアス、そこにOMFウナヒやCFサイバリが絡む攻撃は怖いっちゃ怖いのですが、そこしかないとわかっていてローテーションも人を決めて追っかけると決め込めばある程度は対応できます。
現に何度かスコットランド左サイドでボールを奪い取る機会も出てきていたので、遅まきながらスコットランドはやりたいことができるようになってきた印象がありました。
とはいえ中央封鎖した程度ではさすがのモロッコも揺るぎません。
サイドから飛び出したRSB係争中ハキミがLWGティアニーを振り切って決定機を演出していましたし、何よりマッギンを流し込んで敢行されたスコットランドの中央突破には人手をかけて対応していたので、「少し攻めづらくなったしちょっと前進されたけど失点の危険はないのでこのまま1-0キープかな」といったところでした。
そして何より突破された後やボールを失ったあとのCFサイバリ、OMFウナヒを中心に前線のプレスバックの初動が速く、急行のスピードで前進したいスコットランドが各駅停車を強いられるシーンもありました。
スコットランド側にボールをすんなり前進させられるボランチやラフなボールでも収められるアタッカーが1枚ずついれば、もしかしたら前進もできたかも?と思うので、ここは正直ヨーロッパ予選を奇跡も味方につけて勝ち上がったスコットランドとベスト4やさらにその先を目指すモロッコの差を感じたところです。
後半
「てめえ人が下手に出てりゃつけ上がりやがって」プレス

後半キックオフからパリサンジェルマン式タッチライン蹴り出しを行ったスコットランド。
ビハインドでなかなかチャンスに恵まれなかった前半45分の借りを返すべく、高い位置からのマンツーマンプレスという勝負に打って出ます。
興味深かったのはDAZNで戸田解説員が指摘していたCBディオプにはプレスにいかず、「持たせた」点ですね。
CBのうち左のリアドは自力で剥がしたり気の利くパスが出せるのですが、右のディオプはなんというか昔ながらのストッパー感があり、パスコースを消されると立ち往生する節がありました。そこもスカウティング済みだったのでしょう、ビルドアップのキーマンたるCMFブアディを含めたパスの受け手を捕まえて、CBディオプがボールを持つように仕向けていました。
押し込まれつつも自陣で守っていた前半から一転、敵陣でボールを狩りにいくようにして、それまでカツアゲされ続けたいじめられっ子が虚ろな目でカッターナイフを握りしめた的な怖さを帯び始めたスコットランド。モロッコの攻撃を限定的にさせつつ、徐々に敵陣にモロッコを押し込むようになってきました。
ただ、ここはモロッコのCMF2人ブアディ、アイナウィとOMFウナヒがかなり良かった。
ブアディは前節ブラジル戦で大活躍をしていたのでうまいことは重々承知でしたしスコットランド側もそれを理解してブアディを潰しにいったのですが、アイナウィやウナヒが時にSBの位置にも降りながらCBを助けつつブアディをフリーにしてくれたのが印象的でした。ブアディばかりが注目されますし事実彼も正真正銘のタレントですが、この2人も含めた3センターだからこそ彼も輝けるのかなと思います。
彼ら3センターを完全には潰しきれなかったスコットランドは、せっかくボールを奪ったあとのパスミスなどの自爆もあり、リスク承知のプレッシングでも同点ゴールというご褒美を得るまでにはなかなか至りませんでした。
それでもモロッコはプレスから逃げるために後ろが重くなり前線は守備にカロリーを使い始めた結果前後分断が始まりつつあったので、試合は徐々にボールが忙しなく自陣と敵陣を行き交う、世にいう「オープン」な展開にもつれ込んでいきます。
そしてそれは理知的に試合を進めつつ自分たちはバランスを崩さずリードを保ちたい、「クローズド」な展開を望んだモロッコにとっては避けたかった展開でしょうし、何よりスコットランドにとってはハムデン・パークの奇跡とも呼べるデンマーク戦を想起させるようなお待ちかねの時間の到来を意味していました。

御存知!スコット・マクトミネイ

オープン展開でモロッコの前線と守備陣の間のスペースが空いてくることは、それすなわちスコットランドのエースたるOMFスコット・マクトミネイの檜舞台が整うことを意味していました。
万能な選手なのでボランチの位置でボールを捌いたり、守備に奔走することも苦にしませんが、やはりスコット・マクトミネイの真骨頂といったら隙間で受けてからのエリア内への突撃です。
「こんなのナポリで見るマクトミネイじゃない!」
と嘆いていたセリエAフリークの皆様におかれましては、長らく75分ほどお待ちいただいたあたりで、ナポリの英雄の面影を視認できたかと思います。
またモロッコRSB法廷で会おうハキミ対策として先発したLWGティアニーにかわり途中投入されたRWGベン・ガノン=ドークによる果敢な縦突破も、スコットランドの攻撃に拍車をかけました。
まだ荒削り甚だしく、「うおおおぶち抜くぶち抜く目の前の奴ら全員ぶち抜く、、、で、その後どうすればいいんだ?」なところも否めないガノン=ドークですが、確実に対面の相手を抜いてくるWGが1枚こちらが疲弊したタイミングで投入されると、どうしても陣形を下げざるを得ません。モロッコは俄然前後分断を強めることになります。
モロッコとしても単にスコットランドに殴られっぱなしでいたわけではなく、ボランチから後ろは自陣に残しつつ、疲れが見えた前線を総とっかえして少人数でのカウンターで押せ押せのスコットランドの後背を突こうとしました。現に仕留めかけたシーンもいくつかあったので、方針としては間違ってはいないというかセオリー通りの対応だったと思います。
ただ、このオープンな展開に持ち込むのがいささか遅すぎました。
OMFマクトミネイがペナルティエリアに顔を出す頻度が増し、欲しかったセットプレーの回数も増えてきたところで、無情にも試合終了のホイッスル。
モロッコとしては至上命題だった勝ち点3を確実に手中に収めた一方、スコットランドは悲願のグループリーグ突破に向けてブラジルという大山を超えていく必要が出てきました。
総括
自分たちがつらい時間帯にボールを落ち着けられるかどうかが勝敗の分け目だったかと思います。
モロッコは序盤に自分たちの真骨頂であるサイドの展開から目論見通り先制したものの、なかなかトドメとなる2点目が刺せずに望まないオープン展開へと徐々に徐々に引き摺り込まれていったとも言えます。
ですが、CMFブアディ、アイナウィとOMFウナヒを中心にプレスの中でも1人でボールを引き受けられる選手がいたこともあり、全体の疲弊が顕著になった75分過ぎまでスコットランドに押し込まれ続けることなくリードを保てたと思います。
ただブラジル戦もそうでしたが、ボールを取り上げるようにビルドアップをするのは今大会随一の上手さである一方、フィニッシュのパターンはRWGディアスがラストパスなりドリブルで切り崩していく形に偏りが見られているのは気がかりです。
またCBディオプはこの試合最終盤もスコットランドの攻撃を身体を張って守ってくれましたが、いかんせんボールが足元に来るとあまり引き出しがないのか止まってしまうことがありました。今回のスコットランドのようにCMFを消しながらディオプに持たせる選択をしてきた際、次にモロッコがどんな手を打ってくるかは注目です。
そのほかにもペース配分というか前半攻守に前線の選手がカロリーを使いすぎる節があり、後半は疲弊による前後分断が起きてしまうなど懸念点は見つかりましたが、試合後すかさずワハビ監督が締めるように話をしていたので、大会の中で成長していくかもしれません。要注目のチームであることは変わりなさそうです。
対するスコットランドは策は打てるだけ打ちましたし、開始1分でビハインドを食らいやがったこと以外は狙いは実現できたのでは?と思います。モロッコの攻撃の肝である右サイドを人海戦術で潰す一方でDF→中盤のパスルートも寸断することで最小失点で切り抜けましたし、何より短い時間だったとはいえ「スーパー・マクトミネイ・タイム」とも言うべきオープン展開の”ご褒美”をもぎ取るなど、いい手を指し続けたのではないでしょうか。
ただ、やっぱり予選でも主力を務めたCMFギルモアの不在が痛いですね。相手を潰しつつ中盤の深い位置でCBからのパスを引き取ってプレスをいなしてくれる彼がいれば、前半にボールを取り戻すためにわざわざマクトミネイを下げたりしなくて済んだのでは?とも思います。
加えてここぞのところで(あまり相手のプレッシャーがかかっていないのに)パスミスなどがあって速攻が決まらないなど、歯がゆいところも多々ありました。次は個人技術に長けたブラジルが相手なのでより辛い目に遭うシーンも出てくるかもしれません。
ただそれでも、モロッコ相手にここまで組織としてひとつのプランを完遂するべく動けて同点の可能性を模索し続けたことは誇るべきですし、次の相手のブラジルにも「これは一筋縄ではいかないかもしれない」と思わせられたのではないかと思います。
一見するとモロッコがスコットランドに格の違いを見せつけたゲームですが、じっくり見ると双方に打った策が目立ついいゲームだったと思います。今後も今大会で名勝負が多く観られること、そして個人的にはスコットランド悲願のグループリーグ突破を祈り、このピリついた試合で見られたほっこり映像でお別れです。読んでいただきありがとうございました!
Embed from Getty Imagesこの試合、ユニは千切られるわ口から血は出るわで大変だったアイナウィ。相方ブアディに負けず劣らずいい選手だと思いますがどこか不憫です。
Embed from Getty Images突き飛ばされて当たってきたRWGアマイムーニを我が子のように抱きしめるスコットランドのスティーブン・クラーク監督。なかよし。
<この項・了>



