※はじめに断っておきますが、プレビューとは似て非なるものです。どっちかというとティーザーです。
はじめに
どうも、お世話になっております。「間違えて買った徳用ウインナーの消費方法に悩む」系マリサポのお市です。今の所、細かく刻んでトマトで煮込むが最適解のようですが、流石徳用、一向になくなる気配がありません。
上手くいかない私の自炊とは裏腹に、我らがマリノスは目下絶好調です。なにせリーグ戦10戦負けなし。ルヴァンも含めれば14戦負けなしで、直近5試合の公式戦に至っては16得点3失点となかなかにエグい数字を叩き出しています。
一方、そのマリノスの後ろをひたひたと勝ち点1差で追うのが5位の神戸。イニエスタの不在が長引いてはいましたが、川崎と引き分けたり、東京や札幌との打ち合いを制したりしながら、着実に勝ち点を重ねています。
つまりマリノスにとってこのカードは、セレッソ戦以来の順位入れ替えが発生しうるチームとのゲーム、いわゆる6ポインターです。まだリーグ戦も1/3くらいなので順位に大きな意味はないかもしれませんが、この手のスリリングなゲームをモノにできるのも、覇権を狙うチームの条件でしょう。
今回は絶好調なマリノスに訪れた「我々は本当に強いのか?タイトル争いに値するチームなのか?」という試金石として、神戸戦を考えていきたいと思います。
相手をざっくり言うと:×バルサ化 ◎縦の速さでしぶとく戦うスペシャリスト集団
まずは予想スタメンと軽い前情報を。

【マリノス前情報】
・負傷者:仲川
・出場停止:なし
・リーグ戦目下10試合負けなし。直近3連勝は11得点/1失点
・オナイウは3試合連続ゴール中で8ゴール。前田大然も8ゴール。
【神戸前情報】
・負傷者:ドウグラス(故障の噂あり)、郷家?(発表はないがベンチ外)
・出場停止:なし
・リーグ戦目下8試合負けなし。直近5試合は失点1と守備が安定してきた。
・古橋が絶好調。現在9得点で得点ランキング1位タイ。
イニエスタ獲得以降、神戸について回ったのが「バルサ化」というキーワードだ。
ペップの師匠とも言われ今はマンCの躍進を支えるリージョが去って、その跡を継いだドイツ人のフィンク監督も去って、クラブのレジェンドにして元SD(マリノスでいう小倉さんポジ?)の三浦淳宏が指揮をとっても、話題はイニエスタで周りのイメージは「バルサ化」を志したチームである。
だが今シーズンの神戸を1試合、いや前半45分だけでも見れば、全く別のタフな集団であることがわかるはずだ。
バックラインは決して高くはないし自陣に引きこもることも多いが、その分対人に強い菊池やフェルメーレンがバンバン相手の攻撃を跳ね返すし、日本代表GKの前川の対応も上手いのでクロスからの失点はわずか1のみ。
サイドには「日本サッカーは世界のサッカーと全く違う」と言って話題をさらった酒井高徳がおり、言うだけのことはあるというクオリティでチームを下支えする。
ボランチは広いエリアをカバーする山口蛍と、技術面はリーグ屈指のレジスタと呼んでいいサンペール。
そしてFWにはスピードに磨きをかけゴールパターンを増やした日本代表の古橋がいる。
彼らのスキルや強みを存分に活かし、効率よく速攻をかけて古橋が仕留める流れが、今の神戸の黄金パターンだ。
下手に繋いだり実験的な試みはせず、自分たちの強みと黄金パターンで確実に相手の弱みを突いてくる、そんな骨太なチームだと思っていい。
腕利きのシェフと高級食材を並べ、ブイヤベースやら何やらイチから丁寧にやろうとしたが概ね取りやめ、高級食材をふんだんに使っためっちゃ美味い野菜炒めみたいな感じ。
マリノスボール非保持(守備):サンペールの位置、古橋の裏抜けを頭に入れながら

神戸のリーグ戦全18得点のうち、ロングパスからのゴールは3点。全体の16.7%を占める。(FootballLabより)
この割合の高さはトップ5のうち最多で、いかに神戸が縦一発で仕留めてきたかを知らしめる数字といえよう。
縦ポンだからと侮るなかれ。
出し手になりうるのは(周りのサポートで自由に足を振れる)元バルサのサンペールであり、受け手の筆頭は(周りのサポートでDFとの駆け引きに集中できる)現日本代表の古橋である。
CBと同じ低い位置にいてもサンペールは鋭いロングパスを通せるし、前方に上がるスペースがあれば球足の長いスルーパス(健さんが好んで出すやつ)を思いもよらぬタイミングで出してくる。
Embed from Getty Imagesなんでもない裏へのロングボールに見えても、かけっこで勝てる上に運び方からシュートテクニックまで洗練された古橋にかかれば、一撃必殺のタッチダウンパスになる。
この2人に加え、レフティのマシカやヒガシのクリロナこと増山といった速いアタッカーがいる。ただの縦ポン、されど殺傷能力の高い縦ポン。ここを回避するためにも、ロングパスの出元を潰すのは重要だ。またバックラインが高い位置にいる時の連携(俺はこっち見るからその後ろはよろしく、的なアレ)もいつも以上に求められる。蹴られるのを防ぎきるのは至難の技なので、後者のが大事かも。最近固定気味で連携を培ってきたGK・DF陣のメンバーの真価が問われるし、高丘ようへの裏返った声のコーチングもよく聞こえるはずだ。\ノーファーウル!!(裏返り)/
だが縦ポンだけが神戸の武器ではない。ロングボールで相手を押し下げた後は、できたスペースを使って短いパスをつなぐ攻撃を展開してくる。
裏抜けを怖がって相手DFが下がり、陣形が間延びしたとみればサンペールがするすると上がってくる。ビルドアップ時はCB間に降りてロングパス発射台を決め込んでいたかと思いきや、相手の視線を盗んでスタスタと空いたスペースへやってくる。
広島戦の2点目を引き出したスルーパスは、彼の名刺になりうるパスかもしれない。
ロングパスとは違うサンペール→古橋による一撃。
もっともその裏には古橋の相方を務めたFW佐々木大樹がスペースを作るランニングがあり、かなり巻き戻すと左サイドで3人に囲まれながらも奪われなかったSB酒井高徳のボールキープがあった。DF菊池流帆は古橋でもサンペールでもなく佐々木を褒め称えた。
とはいえ(しつこいようだが)、基本フィニッシャーになるのは古橋であり、彼へのパス供給源として最も恐るべきはサンペールだ。攻める神戸にとっても逆算はしやすいが、守るマリノスも逆算はしやすいはずだ。彼らが経由することで生まれるゴールへの方程式を完成させないよう、プレスや裏抜け潰しで妨害を続けていきたい。
マリノスボール保持(攻撃):相手のお株を奪う長短の出し入れ→裏取り

一発のロングパスからゴールまで行ける神戸は、攻め込まれたら迷わず撤退を選ぶ。どんなに押し込まれても古橋へのパスで前進できるため、攻めに転じる人手は少なめにして守るためにゴール前に人手をかけられるからだ。「押し込まれてもマルキに預けりゃオッケー」なかつてのマリノスにちょっと似てる。
こんな割り切りと、対人守備に長けるトーマス・フェルメーレンの復帰と菊池流帆の台頭が功を奏してか、直近リーグ5試合はわずか2失点だけ。引いて守ると2人のCBは得意な相手もろともボールを跳ね返す仕事に、GK前川はペナルティエリア内での仕事に集中できている印象。彼らの評価がグイグイ上がっているのも頷ける。
こんな神戸に対して長い時間押し込んでもロクなことがないのは、去年の三ツ沢でのゲームを見るとよくわかる。
ではどのように神戸を攻めるか。
手始めにやるべきは、神戸のお株を奪うロングパスやサイドチェンジを織り交ぜていきつつ、相手の陣形を引き延ばすことだろうか。DFとMFの距離、DF同士の横の距離を引き延ばすと、個人の裁量が大きい神戸では1人で見なければいけない相手やスペースが増える。
また、縦に押し続けるだけでなく、一度後ろに下げて相手を引き寄せるのも大事。「押してダメなら引いてみよ」はサッカーでも言える話だ。鹿島戦で古橋と並んで対マリノストラウマ量産機の上田が決めたゴールは、一度神戸が前へ前へと突っ込んだ結果できた、DFラインのガタつき(ギャップ)を鋭く突いた一撃だった。
この前に一度左サイドへのサイドチェンジで、横に陣形を引き延ばしてDF間の距離を遠くさせている。さらに(カウンターを受けそうになっているので鹿島としては意図的じゃないだろうけど)ボールが下がったため、攻め上がるタイミングにズレができて縦にもギャップができている。
ここまでマリノスは、バックパスを含むボール回しを続けて相手を引きつけ、鋭く裏を突くやり方をサイドで多く見せてきた。
引いて守れる神戸でも、菊池や山川はがつーんと当たってずどーんとボールを奪える(対人能力って言っても伝わりにくそうだったのでオノマトペに頼った)ので、前に出て潰しに来る。ポストプレーに磨きがかかってきたオナイウやテクニカルなマルコスの落としで相手を引き出せればこちらのもの。
サイドを変える長いボールも、相手のラインを下げるロングパスもマリノスは実装してきた。もう「蹴れないポジショナルプレー」だなどとは言わせない。引き寄せるバックパスと、引き延ばすロングパスをふんだんに使って、引いて守れる神戸を引き出せるか。穴にこもった熊を引き出すマタギのような辛抱強さを持ちつつ、今シーズンの成長を見せつけたい。
あ、そのパス回しの間に引っかかると裏抜け一発で地獄を見るので注意ね・・・
Key Match up:オナイウ阿道 vs 菊池流帆
Embed from Getty Images Embed from Getty Imagesどちらもレノファ山口で霜田監督の薫陶を受けた選手(オナが大分に移籍した2019年に菊池は入団しているので、被ってはいない)。2人とも荒削りで山口での経験を経てブレイクした印象があるが、今年に入って凄みを増している。
菊池は188cm/80kgの数字が表すようにフィジカルの強さを武器とする、いわゆるファイター型のCB。マリサポらしくマリノスの選手でたとえるなら、栗原勇蔵クラブシップキャプテンの現役時代みたいな感じか。ただし勇蔵さんの500倍はうるさい。
引いて守る時に、ガツガツ跳ね返せるCBがいると助かるのは、樋口政権以前の「堅守」を知るマリサポならよーーーーくおわかりかと思う。現にレアンドロ・ダミアンやジュニオール・サントスといったゴツいFW達を前にしてもおりゃーと当たってどっせーいと潰したり横からのクロスがくればうりゃーと跳ね返す(オノマトペに頼るその2)。誰を潰すべきか明確になっていて、1対1やクロス対応に集中している時の菊池は手が付けられない。代表入りを求める声も当然と思える。
そんな菊池に対するは、こちらも今シーズン絶好調のオナイウ阿道。跳躍力や一瞬のスピードといった身体能力だけではなく、相手DFが「え、俺がマークするの?いやこれお前だろ」と悩む立ち位置の妙、確率がどんどん高まったポストプレーもより輝いてマリノスに不可欠な選手になりつつある。
だが今年のオナは攻撃の潤滑油に止まらない。下がってボールを叩きながらもチャンスのシーンではゴールを奪える位置に必ず顔を出す。ポストプレーで見せた繊細なボールタッチは、ゴール前ではワンタッチで仕留めるために使われ、気づけば得点ランク4位タイの8ゴール。オナだって代表入りを求める声があっていいはずだ。
そんなオナに求めたいのは菊池を引きつけてギャップを作るためのポストプレー、そして菊池の苦手分野であるパスを引き出すプレスだ。サンペールやフェルメーレンや山口蛍のロングキックはかなり高精度だが、彼らと比べると菊池は見劣りする。おりゃーと蹴飛ばすのはよくやるが、ピンポイントで裏をとるシーンはあまりない。その辺も勇蔵さんにそっくりだ
蹴らせないためにも、そしてあわよくばショートカウンターを成立させるためにも、プレスの一番手としてのオナの役割は重要になるだろう。
互いに上り調子のCBとCF。このマッチアップはお互いの価値を証明し、知らしめるものになるに違いない。
おわりに
序盤に書いた通り、マリノスにとっては久々に迎える上位チームとのゲームです。
上位チームとのゲームが順位に直結するということは、マリノスがいい順位でいられている証とも言えるでしょう。
今年に入って連勝が続き、雑音やヘイトは手のひらを返したかのように賞賛の声に変わりつつあります。「マリノスは変わった」「守備が良くなって勝てるようになった」「大人のチームになった」と。
本当に周りの言う通りマリノスは「大人のチーム」になったのか、「勝てるチーム」になったのか。守備の連携や惹きつけるパスを磨いたマリノスにとって、そのクォリティを問われる神戸戦は、同時にチームの真価を問う試金石と言えます。
ここまできたら、もはや言い訳の用意や謙遜などの転ばぬ先の保険はなしです。
「俺らは目先の結果は気にせず、ロングスパンでビッグクラブになるんだ」だとか、
「俺らは特異なサッカーをやってるから、結果より内容の積み重ねが大事なんだ」だとかはもう不要。
将来の覇権でも芸術点の高いサッカーでもなく、今年のNo.1を掴むに値するチームだと証明する勝利を期待します。
身の程知らずと笑われようが
We are No.1 club 元「昔の王者」
<この項・了>