【Show me】2020年J1リーグ第3節vs湘南(H)【What you got】

どうも、「人類史上初めてツイキャスでオナイケした」系マリサポのお市です。今回も連戦でもういくつ寝るとトーキョー戦ですので、さくさく行きましょう。

まずは結果をどん。

負けも大いにあり得たゲーム。勝利の女神を半強制的に笑わせたのは、ベルギー帰りの背番号39と「ゴールさえ決めれば」と言われた新エース候補。ドラマティックな幕切れで遅まきながらリーグ初勝利を飾りました。

ただ、エモにだけ振れてもいられません。いいところと悪いところを振り返っていきましょう。まずは簡単なスタッツから。出典はおなじみSofaScore.com。再開後もよろしくお願いします。(緑がホームのマリノス、青がアウェイの湘南です)

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シュート15本中枠内3本と湿った浦和戦に比べると、12本中枠内5本と若干の改善が見られます。また12:3と圧倒的にエリア内が多かったシュートも、6:6でイーブンになりました。

一方で今回もばっちり10本のシュート(うち4本は枠内)を打たれましたし、エリア内でのシュートは7本と湘南のが多いです。デュエルでもわずかながら湘南に負けています。

この辺から、2020マリノスが得たものと、連覇への課題が見えてきそうです。さくさくっと掘り下げて、すぐ続く連戦へ備えていきましょう。
久々のマリノスレビュー、はっじまーるよー。

 

課題:詰まり気味の両翼

スタメンはこちら。

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マリノスは…
・CBしんちゃんの相方には、チアゴではなくまきとを起用。
・浦和戦でそれぞれチームトップのスプリントをした両SBを交代。
右に健さん、左に高野きんにくんが入る
・LWGには渓太ではなくえりりんを起用。渓太はベンチ外なので東京戦に温存?

湘南は…
・これまで同様3-1-4-2のシステムを採用。陣形はマリノスに合わせて変更せず。
・指宿、中川寛斗の凸凹2トップがスタメンに。
・アンカーに「チャナティップどうすんの」金子、RHV(3バック右脇)には大野。

キャスでも話したが、キックオフから湘南はプレスを基軸にプレーしてきた。この設計が実に巧妙だった。前節の浦和とは形は別だったが、押さえた要点はほとんど同じだと思うので図にしてみる。

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要点1は「畠中に縦パスを出させない」、要点2は「マルコスに極力前を向かせない」、要点3は「仲川はスペースを消して対応」とマリノスの強みを消すための策を出してきたわけだ。
これらを押さえた上で5-3-2のコンパクトなブロックを形成。マリノスのポジションチェンジを無力化しにきた。浦和も同じような対策を敢行してきたので、もはや広く共有された「マリノス対策」といえる。
結果、崩しの切り札であるテルは、万全の状態で手ぐすね引いて待っている鈴木冬一と対峙する羽目になり、攻撃をスタックさせてしまった。(それでも完全に沈黙はせず前半唯一となった決定機を演出したクロスを見舞ったのは流石だが)

その中でもマリノスはボランチ、SBのポジションチェンジをもって、湘南の2トップの背後付近に右→左のパスコースを生成するなど対策は打った。浦和戦よりもDAZNアタッキングサイドに占める中央の割合が増えたのが、中を経由した逆サイドへの展開を物語る。

とはいえ、テル対策が進んだ右サイド同様、前半は左サイドも苦しかった。
この日初コンビだったえりりんと高野きんにくんのところで、認識のズレからパスミスが増えてしまった嫌いはある。

左右両翼で「なんか攻め切らない感じ」が増えてくるにつれ、徐々にロストが増えてくる。

おかしいな〜おかしいな〜(カウンターが)こわいな〜こわいな〜と思ってたらね、前半点がね、なかったんですよ…(夏なので稲川淳二)

 

課題(要経過観察):帰陣 再配置のスピード

前半攻めあぐねたマリノスは、だからこそ後半の入りで点が欲しかった。
だが先制点をとったのは、5-3-2を敷きつつしたたかに機会を伺っていた湘南だった。

この中川寛斗のゴールの数手前に、マリノスは実はピンチを迎えている。IHの位置から飛び出した齊藤未月(名前がヒロインっぽい)がカジを抜き去った50分のシーンだ。

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ここは高野遼怒りのスプリントで難を逃れた。やはり筋肉−−−。筋肉はすべてを解決する。

だが、このクリアから得たスローインが元手で、マリノスは失点を喫する。

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あっさりとサイドチェンジを許し、鈴木冬一の渾身のクロスを中川に叩き込まれるわけだが、この時の湘南RHV石原の持ち出しがかなり大きかった。扇原を釣り出し、のちに決定だとなるサイドチェンジを見舞うRWB岡本をフリーにしたのだ。高野をピン留めして石原に対応させなかった齊藤未月(名前がヒロインっぽい)の立ち位置もよかった。
一方マリノスとしては、タカが石原に食いついた時に岡本のスペースを消す必要があった。クリリンが下がるか、なんなら石原を捕まえられるようえりりんが下がってタカが持ち場を離れない選択もあっただろう。ともあれ、すぐ入れられたスローインに対して、立ち位置が崩れたままで対応を強いられてしまったのが痛恨だった。

その前にもクイックリスタートによるマリノスSB裏へのロングボールでの危機を迎えていた(47分)。

この手の守備のほころびは、少なからずメンタル的な要素も関与しているかもしれない。
だが、そもそもここまで崩れていると、この地点に到るまでの陣形に疑問が残る。具体的に言うとボールを保持している間、ボールロストした後を考えてスペースを埋める動き直しが不足(または遅い)のではなかろうか。
「集中!」の一言で片付けずに、立ち位置を見直し続けられるか。身体はもちろん頭にも負荷がかかるこの作業を連戦の中で続けられるかは、今後継続して注視すべき課題ではないだろうか。

 

発見:”ファイアーフォーメーション”に意味をもたらす質

与えてはいけない先制点を与えたマリノス、瓦解しかけたプランを修正すべくベンチが動く。

AJ、水沼の新米パパコンビとオナイウを一気に投入。ほとんどサイドハーフがCFと同じ高さをとる4-4-2ならぬ4-2-4に切り替えた。

 

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一見すると無謀にも攻撃に全振りした「ファイヤーフォーメーション」にも見えるこの4-2-4だが、上の図のようにすると、湘南の5-3-2ブロックの隙間にキレイに人が入る形であることがわかる。
しかし、ただ隙間に人を置くにしても人選が重要だ。隙間に筆者のような中肉低背のサラリーマンが立っていたとしても、何も出来ないので守備側は放っておくだろう。ボスがそこに起用したのはオナイウ、そしてAJだった。

片野坂大分でシャドーとしても活きることを証明したオナイウは、トップ下なのでは?と思わせるほどに頻繁に降りたりサイドに流れたり動き回った。それを見逃すのもなんだな、と守備者が付いてくる。代わりにエジは極力DFライン近くから動かず、他のDFを足止めする。これでDFラインに段差や隙間が生まれるし、降りたオナイウがボールの預けどころになった。
反対にオナイウがエジと同じ高さに位置取れば、DFはここにつく。その代わりハーフレーンのエリア角が空く。オナイウの立ち位置次第で2つのスペースが空く仕組みが整った。

そこを使ったのが去年の今頃、奇しくも同じ三ツ沢で、言葉を選びながらも自分の野心を語り、さらなる成長を求めて海を渡った背番号39だった。右に流れたオナイウ、エジ、そしてテルによりDFラインはピン留め。空いた左エリア角前から、彼は虹をかけた。

開幕戦のマルコスのコントロールショットに続くゴールは、エリア外からのゴールだった。

となると隙間が無視できない湘南は、人と人との間に立つ選手を捕まえにかかろうと少しずつズレる。そうしてできた花道を、AJが突き進んだのが2点目のシーン。

このゴールでは、オナイウがRHV石原を、エジがCB坂を左に引きつける。リターンを受けたAJはオナイウとエジとの間を縫うようにワンツーを試みるが、途端に進行方向を急転。中央の花道を突き進んだ。そこからの細かいタッチはテクニシャンとして知られる彼らしいものだったが、咄嗟の閃きでエリア内への単独突破を試みた強気の選択、そしてそれを可能にした身体のキレは、「あそこでゴールを決め切れたことで成長を見せられたかなと思う」と自負するに相応しい進化の跡だったといえよう。エリア内へのワンツーでの侵入からのゴールはマリノスにとっても稀有な形だった。

そこからオープン展開ゆえの失点があり(ここも語りたいが今回は収穫の話をさせてほしい)、あわや勝ち星を落としかけたが、飛び道具を持ってトリコロールに帰ってきたもう1人の男が、溜まりに溜まったストレッチパワーを解き放つ。

stretchman

いやこの人じゃなくて

この人、水沼宏太の正確無比なクロスがオナイウのゴールを引き出したのだ。

このクロスの影の立役者になったのが、画角の外からハーフスペースに抜け出した伊藤槙人だった。「守備の人」のイメージが強い彼が、フルスプリントでハーフスペースを突いたせいでLHV大野は水沼のチェックに行けず、CB坂が代わりに水沼についていく「受け渡し」が発生。そのわずかな隙間が、ターンしてクロスを上げる時間とスペースを水沼に与えた。
その結果、ペナルティエリア角の高いクロスから、CFが頭で合わせてゴール。「見ないでニアクロス」でおなじみとなったマリノスらしからぬゴールが生まれた。

このようにマリノスは、エリア外からのシュートやワンツー、さらにはアーリークロスからのヘッドと引いた相手を砲撃する手立てを新たに見せつけた。「仮に引いたとしても、ズレさえ作れたら崩し切らずとも点を奪う武器が今年のマリノスにはある」と他チームが思うだけでも、悩みのタネにはなるかもしれない。今後を考える上でも価値ある3ゴールだった。

 

おわりに

昨季J2入れ替え戦まで行ったチームとは思えないほど、オーガナイズされた守備を見せてきた湘南。つくづくJリーグに楽なゲームなどないなと思います。
とはいえ、「偶然を必然に変える」「常勝軍団になり世界を目標にする」といった壮大な中期目標を掲げている以上、いかに下位相手の取りこぼしを減らせるかは重要です。

また、浦和戦で各方面から指摘があったように、各クラブが凝らしてきたマリノス対策を上回り続ける必要があります。昨年の出来を「ピーク」として目指すのではなく、「ベース」として改善し続けなければ連覇はおろかACL圏内も危ぶまれます。
改善のための新たな武器は、新戦力を始めにもたらしてくれそうですし、今年のマリノスが得たものを見せつけていきたいところです。

今後も反省を活かして改善しつつ、勝ち星を積み上げてまた優勝の美酒に酔いしれましょう。

いずれにせよ、王者、遅ればせながらリスタートです。

<この項・了>

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