【ありがとう】2020年J1リーグ第1節vsG大阪(H)●1-2【悲しみよ】

はじめに

どうも、「開幕戦で一番きつかったのはスギ花粉」系マリサポのお市です。目と鼻がかゆすぎてスペアパーツが欲しいくらいです。花粉症患者として戦っているうちに、開幕戦は1-2の敗北で終わってしまいました。

前半の2失点を覆せず、開幕黒星発進となってしまいました。「アタッキング・フットボール」を掲げる我々からしてみれば、逆転まで持っていきたいところでした。とてもつらい。

とはいえ、「優勝チームは研究される」「勝つことよりも勝ち続けることのがもっと難しい」という言葉を痛感したこのゲームを振り返れば、対策の対策も考えられるのではないかと思います。もう一度勝つために、宮本ガンバが敷いてきたマリノス対策と、それに対するマリノスのリアクションを振り返ってみましょう。(しんどいけど)

それでは今季1発目のマッチレビュー、はっじまーるよー。

 

スタメンとスタッツとxG

まずはスタメンどん。

20200223_vs_gamba_stamen

ガンバはやり慣れた3-1-4-2ではなく、矢島、井手口の2IHを置く4-3-3を採用。マリノスの崩しを司る両WGにはスピードに長けた藤春、対人守備に優れたオジェソクを配置してマンマーク気味に対応させました。また倉田、小野瀬の両WGはマリノスのSBへのプレッシャー役として振る舞い、キーマンのクリリンは遠藤保仁が監視する格好をとっていたかと。
対するマリノスはACLシドニー戦から変更なし。今のチームの成熟度をあげるための選択だったのではないでしょうか。

次にスタッツです。出典は今年もお世話になりますSofaScore.com

スクリーンショット 2020-02-24 14.39.06

支配率は7割超えの割に枠内シュート数は負けているという、「してやられた」ゲーム感。ちなみにガンバの支配率はJ1のゲームでも最低値だったみたいで、いかに彼らが割り切ってきたかが窺えます。支配率なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです。

さらに簡易的ではありますが、シュート位置から値を割り出すwebサービスを使ってxG(ゴール期待値)※を出して、両チームのシュートを可視化してみました。

まずはマリノス。

前半は期待値の高い(≒得点に繋がりやすい)位置でのシュートはできませんでした。無得点に終わってしまったのも納得できます。ただ後半はエリア内からのシュートが増えて期待値の高い位置からシュートを撃てています。

次にガンバ。

後半こそシュート2本に抑えられましたが、前半は期待値の高い位置からシュートを撃っており、しっかり仕留めています。

※xGについての詳しい説明はこちらをご参照ください。

マリノスは「後半決めるべきところを決めなかった」という見方もできますが、ガンバがマリノスにいい形を作らせなかった、という見方もできます。
ではガンバがどのようにマリノスを封じてきたか、また後半マリノスはどのように対策を上回ろうとしたかを掘り下げていきます。

 

前半:Q.ガンバがやってきたマリノス対策って結局なんなの?

A. 左右サイドの起点を潰し、ロングボールでボールを進めた。

Football Labのマッチレポートにもあるように、マリノスは主に左サイドから攻撃を構築していました。これはガンバ戦に限ったことではなく、ACLのシドニー戦、全北戦でも同様の事象が見受けられています。(画像はシドニー戦全北戦のAFCマッチレポートより)

ボールキープとパスに長けたティーラトン、上手く周りを使いつつも仕掛けられる渓太、長短のパスでアクセントをつけられる扇原、さらに(この試合はいませんでしたが)クサビのパスでスイッチを入れられる畠中がいる左サイドがマリノスの攻撃の起点であることは、もはや周知の事実です。ガンバはLCBの槙人とLSBティーラトンに重点的にプレスをかけ、左から始まるマリノスの攻撃を逆手にとってショートカウンターを狙いました。

とくに槙人は自身に対するプレスだけでなく、パスコースも埋められてしまったように思えます。下は槙人のパスを可視化したものです。左は前半、右は後半です。

前半が特に顕著ですが、相手の選手(主にCFの宇佐美)を超えるパスは基本的に外へのパス、つまりブロックの外へのパスがほとんどです。CBとしては異例とも言える98本ものパスを成功させた槙人ですが、裏を返せば相手ブロックを回避したパスが多かったともいえるでしょう。

左が潰されると右の松原→仲川ラインを使いたくなるのですが、こちらは先述の通り藤春が仲川にマンマークで対応。裏をとるバックドアの動きが封じられてしまいました。

とはいえサイドから少しずつボールを進めたマリノス。xGは低い位置からではあるものの、何回かシュートチャンスを迎えます。本来であればそのままガンバの自陣でのビルドアップに対してプレスをかけて、ずっと敵陣でプレーし続けたいところ。しかしガンバは決して無理につながず、ロングボールでボールと選手をマリノス陣内に押し込めます。
下の図はガンバのロングボールを可視化したものです。(時間の関係上前半しかできませんでしたorz)

20200223_vs_gamba_long

この図からわかるとおり、ガンバのロングボールは競り合いの強い誰かをターゲットマンとしてそこに蹴ったのではなく、10本/13本をマリノスに先に触られています。しかしその次、2タッチ目はガンバの選手がタッチしているケースとなると、5本/13本と確率が上がります。
また蹴っている先も特徴的です。左の2レーンが7本/13本と偏っています。

ここから「左サイドを中心にロングボールを蹴ってボールを遠のけ、競り合ったあと(セカンドボール)を回収しやすくしている」ことが窺えます。さらにただボールを押し込むだけではなく、決定機の創出にも繋がっていました。その結果が2点目です。

マリノスがラインを押し上げるタイミングでのロングボールは、昨年のアウェイFC東京戦でも見られた「マリノス攻略法」のひとつです。飛び出す選手を見落とさないように、と言うのは簡単ですが、対策は困難といえるでしょう。ライン押し上げのタイミングでいっせいに全選手が駆け出していればオフサイドもとれたかもしれませんが、失点シーンはセットプレーから間も無くだったので、同タイミングで上がるのも至難の業だったかと。
今後も引き続き狙ってくる手段でしょう。誰かが残って対応するのか、それとも全員合わせて上がるのかの認識合わせが必要だと思います。

 

後半:Q.監督や選手コメント見ると後半手応え覚えてるみたいだけど、実際どうなの?

A. 交代で前線に流動性をもたらし、筋肉で左サイドを制圧した。

後半、ボスは2枚のカードを切ってきました。喜田からエリキ、ティーラトンから高野という変更です。便宜的にフォーメーションを数字で表現するとしたら4-1-4-1でしょうけれど、エリキはかなりフリーロールで縦横無尽に動き回っていました。

20200223_vs_gamba_2

ただこの縦横無尽の動きこそが、ボスの求めるものだったのかと思います。小野瀬を下げて5-4-1で守るガンバはマンマーク気味にマリノスの選手に対応していました。藤春はテル、オジェソクは渓太と対面の相手に慣れてきていたところに、いきなりエリキやマルコスといった選手が来た格好です。

また左サイドにはブンちゃんよりも縦突破や高速クロスに長けた高野が入り、左アウトサイドレーンを制圧しつつ渓太をハーフスペースから内側のゴールに近い位置に押し出しました。下は高野のプレーを図にしたものです。

20200223_vs_gamba_ takano_1

タッチライン際を中心に高い位置でプレーしていることがわかります。ほとんどLWGのプレーですね。。。ただ時折中央レーンに顔を出してDFライン裏へのスルーパスを狙ったり、長短のパスで相手の背後を狙っている形跡も窺えます。「槍」と形容されがちな彼ですが、単にライン際を上下動するSBではないこともわかりますね。
また、自陣の左ハーフスペースにあるように、俊足を飛ばしてカバーリングをし、ピンチを未然に防いだところもあります。現地で見ていて「あ、これはやられましたわ」と諦めの境地に至ったところに颯爽と現れる高野きんにくん。まさに「筋肉はすべてを解決してくれる」ですね。

Cge1xoaUkAAG2Xb

話が脱線しましたが、こうして相手陣内に入る選手を増やしたマリノスは、クロス爆撃の末にゴールを割ります。

リーグ戦第1発目は、新キャプテンに就任したマルコス!残り時間わずかでも同点、さらには逆転を目指すようチームとスタンドを鼓舞する姿は、まさにキャプテンにふさわしかったです。このゴールも左サイドからクロス→右サイドへクリア→ボールを拾ってチアゴがドリブル→タカからマルコスと左右の揺さぶりから生まれたもの。引いた相手のブロックの隙間をすかさず突いたこのゴールは、今後リトリート(自陣に引いて守る撤退守備)を使ってくるチーム相手も崩せる、という自信に繋がると思います。

 

おわりに

相手に研究されるのは、裏を返せば相手がこちらの粗探しをしてくれるということ。突かれた粗を補修していくのが、王者となったチームがアップデートする早道ではないかと思います。去年も大分、札幌、セレッソといったしっかり研究してくるチームと当たって、そのたび考えては微調整を繰り返して頂点までたどり着いたものです。
今回のゲームも糧として微調整してアップデートに繋げられるか、それともただの敗戦のまま終わるかは今シーズンのターニングポイントになると思います。トリコロールのさらなるアップデートに期待しましょう。

最後に、今回のレビューの内容とは無関係ですが、仁川ユナイテッドの柳想鐵名誉監督について触れさせてください。

正直私はサポ歴が浅く、「サンチョル兄さん」と呼べるほど彼の現役時代の思い出があるわけではありません。ただ全北戦での幕を見て病をおして横浜まで来てくれたこと、そして自身がもっとも厳しい状態にあるだろうに「私は絶対に(病の克服を)諦めません」「皆さんも元気で」と言ってくれたことだけで、彼の人柄とマリサポが彼を愛する理由がわかりました。

スポーツもといサッカーは、時として人を傷つけます。パフォーマンスが悪ければ心無い言葉が矢のように降り注ぎ、批判の的となって自分はおろか家族の身も案じなければいけない審判もいました。それでも時としてサッカーは、人の心を揺り動かし、人と人とを繋げることもできるのだと、万雷のユ・サンチョルコールは教えてくれました。
幕をはじめとしたエールへのお礼と「諦めない」という宣言をするために横浜まで来た柳想鐵氏。それに対し応えようと声を張り上げるマリサポ。サッカーがなければありえなかった縁が作り出した光景だと思います。私はあの20分弱の出来事を忘れることはないでしょう。クサい言葉ですが、こうした縁をもたらしてくれるサッカーとそれを作り上げるすべての人々に感謝です。

そして柳想鐵名誉監督が病魔に勝てるよう、マリノスサポーターの一人として心から祈念して、本文の締めとさせていただきます。

<この項・了>

コメントを残す