【されば港の】2019年Jリーグ第12節vs神戸(H)プレビュー【数多かれど】

どうも、「キャッシュレス系マリサポ」のお市です。何がどうキャッシュレスなのか、詳しい話はこちらのnoteをご参照ください。

そうそう今回からプレビュー、はじめました。レビュー以上に色々粗が見えるかもしれませんが、数多の船を受け入れてきた横浜の港のごとき懐の深さで受け入れていただきますよう。

それじゃ時間もないので、ホーム神戸戦「ミナトマッチ」のレビュー、はっじまーるよー。

 

スタメン予想、そしてイニエスタ

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<神戸の事情>

  • 不動のウィングとして神戸のサッカーを下支えした古橋が鹿島戦で負傷離脱。
  • 西大伍は前節出場停止だったためマリノス戦には戻ってくる、、、はず。
  • 前線の組み合わせは最適解を求めて模索中っぽい。前節のトップ下は三田。
  • カップ戦も合わせると7連敗中。全てが1点差で負けている。

神戸の守備と攻撃の陣形はだいたいこんな感じ。

キーポイント1:奥行きと幅、そしてイニエスタ

神戸の注意点として、ビルドアップのパターンが多岐に渡る点が挙げられる。

(新しいおもちゃを得た子どものように隙あらばスライド)

多彩なパターンを可能にするのが、「奥行き」と「幅」である。

2CBの大崎、ダンクレーはどちらも縦パス・持ち運びなんでもござれなチャラい現代的なCBだし、アンカーの位置に入るサンペールは前進するタイミングの提示から最適なパスルートの開拓までワンストップなソリューションをご提案(なんかよくありがちな商売文句だ )してくる。
ボールを前進するためのスキルを持ったメンツがいて、前進するタイミングもパスルートも作ってもらえる。なので神戸は急がない。攻撃はペナルティエリアちょい手前とか自陣深くからスタートする。これに対戦相手が前プレをかければ、まず相手の陣形が前に伸びる

さらに神戸の最前線には、かつてエリク・モンバエルツ前監督が富樫敬真に「この人(の動画)を見よ」と勧めた裏抜けの達人、ダビド・ビジャがいる。前線の選手が大崎&ダンクレー&サンペールを潰すべく深追いしているからとDFラインをあげようものなら、この元スペイン代表のエースにザックリ裏を取られ、失点を招きかねない。すると相手DFラインはジリジリと後退していく。これで相手の陣形は後ろにも伸びた。

前と後ろに相手陣形を引き伸ばすことで、神戸は「奥行き」を確保できた。

また、神戸のWGはマリノスのWG同様、タッチライン際目一杯まで開くことが多い。
神戸には古橋(たぶんマリノス戦来ないけど)、郷家、TJ、小川など単独で対面のDFを突破でき得るスキルを持つアタッカーが揃っている。1対1で仕掛けて、ボールを相手ゴール前まで運べる彼らを、相手は無視できない。なのでSBが対応に入る。

さらに神戸のSBは結構高い位置、具体的にサンペールと同じくらいの高さに位置取る。彼らをケアしようとすると相手のWGも引っ張られてサイドに行くことになる。

こうして横に引っ張ることで、神戸は「幅」を得る。

その「幅」と「奥行き」によってできたスペース、パスコースの先にいるのが、「世界最高のMF」「カンテラ(バルサの育成組織)最高傑作」「ルミ子も絶賛」でおなじみのイニエスタだ。彼は決してメッシのようなゴールやアシストをバシバシ決めるタイプの選手ではない。

だが、相手の嫌がる位置に立って味方を働きやすくするプレーをするのは大得意。そして何より、簡単そうにやっているプレーが全て意味があり、何がしかの効能がある。持ち上がるドリブルにも出すパスの強弱やコース、果てはボールを受ける前の所作1つにもいくつもの意味を込められるというおぞましいプレーヤーだ。簡単そうに何個もの意味を持つ行動をする辺りは、「熟練の天ぷら屋」のような感じだろうか。

まあ、イニエスタ司教については、素人の私があれこれ語るより「新婚旅行でバルサを観に行く」天野解説員が語ってくれているのでそちらをご参照いただきたい。

「幅」と「奥行き」を作り、そこのスペースに「イニエスタ」。彼を媒介にしてWGやビジャ、SBがゴリゴリと攻め上がり、スペースを侵攻してくる。
最初こそゆったりボールを進めているように見えて、実は攻め切るための下ごしらえだったりして、攻め切る時はあっという間に相手を瓦解させる。日本代表MF小林祐希的に言えば「前戯を大切に出来る男」な感じが漂う。

とはいえ、個々の選手の質が高い神戸だからこそできる攻め方かな、とも思う。「奥行き」も「幅」も絶対的な個々人のクォリティ(質)があればこそだ。もし先頭がビジャのような協力なFWじゃなかったら、もし後ろのCBとアンカーが、もしWGがもう少し怖くない選手なら、相手は意識して陣形を縦横に伸ばしたりしないだろう。
だから「ウチもあんなしっかり崩す論理的なサッカーやろうよぉ」と言っても「ウチにそんなお金はありません!ってかそういうチーム作りしません!ブッフォン!?置いてきなさい!」とオグベンさんに叱られかねない。ウチにはウチのサッカーがある。

 

キーポイント2:使われるスペースを使ってしまえるか、そしてイニエスタ

という風に一見ロジカルな神戸だが、このロジック通りに事が進んでいれば今頃は「得点量産できてるしきっちり崩してる分相手を押し込めるからカウンター食らわず失点もしない」というおいおいどこのマンチェスター・シティだ!(本社への媚び)とばかりに勝てているはず。それが勝てない理由は、渾身のマリノス取材記事が載ったフットボール批評issue24が好評発売中(ステマ)の舩木記者が指摘してくださっている。

記事に曰く、LSBを務める三原は前節鹿島戦をこう振り返って、

攻撃のところだとやっぱりミスが多かったですし、守備のところは連動して前からいけずに間が空いて間延びしてしまったと思うし、何かこれというのはないですけど、いろいろなものが積み重なっている

とミスの多さや間延びした陣形での守備の難しさを口にし、さらに続けて、

ビルドアップのところで相手の中盤を外すところまではいけていても、その後の精度だったり、アイディアだったり、チャンスにつなげるところまでいけていないので、全然怖い攻撃ではない

と敵陣深くでの攻撃のアイディア、精度不足を指摘。あれ、これマリノスと同じ病状では…

だが、三原が嘆いたのも無理はない。鹿島戦は「幅」と「奥行き」がむしろ狙われたゲームだった。縦幅と横幅を広げようとして、自分たちも間延びした形を取っている形が多いためだ。

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三原が「前から行きたかった」というように、DFラインは鹿島の前線を意識して深めに位置どり、前からのプレスがなかなか連動できなかった。また、(これは仕方ない話だけど)WGが幅をとった結果、横に間延びした形となった。これでハーフスペースを比較的早い段階から使われ、してやられたのがこのゴール。

「幅」と「奥行き」をとるということは、スペースを広げることであり、スペースを広げるということは攻める時は使い所やパスコースが増えるものの、守る時はリスクをはらむということの証左かもしれない。(スタジアムで安直に「幅とろうぜ!」とか言うのやめよ…)

ということで、神戸の狙いとして縦横に広がったスペースが、そっくりそのままマリノスの狙い所となるだろう。とりわけ個人的に狙って欲しいのが以下の2点。

  • ビジャの後ろ
  • サンペール周辺
  • SBの脇と裏

あれ、実質アンカー脇とSB裏じゃね?これってマリノス攻略法と同j…

まず、ビジャの後ろ
裏抜けの達人たるダビド・ビジャは、相手DFがボールを持った時、ここぞの場面で全力スプリントをかまして追い回す。そのタイミングはかなり独特だが、概ね「相手の背後に忍び込んで独力で奪う」ことが狙いなようにも見える。
他方、「相手の前に立って味方に奪わせる」ことはあまりやってくれない。前残りしてDFライン裏を狙うタスクを担っているとはいえ、うっかり相手CBから最も近い前進の手立てであるアンカーへのパスコースを開けてる時すらある。しんちゃん、出番だ。

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次にサンペール周辺のスペースについて。
「ワンストップでご提案」のデキる男サンペールだが、まだドイスボランチでの守備は不慣れなように見える。というかそもそも「前プレが効きにくい中でボールを持たれる」という環境が不慣れなのかもしれない。
鹿島戦でも山口蛍との間を通すパスがあり、山口とお見合い気味になってしまったシーンがあったり、さらにはSBとの間を埋め切れずハーフスペースへの侵入を許すシーンもあった。カバー範囲の広い相棒の山口蛍を牽制しつつ、神戸のデキる男をテンパらせたい。

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最後にSBの脇と裏
鹿島の安西・白崎の左サイドコンビが目をつけ、試合開始17分でゴールに結びつけた部分だ。
「幅」をとりSBを高い位置に立つ神戸のサッカーは、必然的にその脇(CBとの間)と背後にある裏のスペースを晒すことになる。マリノスお得意(まあ神戸も得意だけど)のサイドの三角形を作って崩す方法を実施するにはおあつらえ向きのスペースとなり得る。
このスペースを使うためには、なるべく「神戸が攻撃時の陣形に近い」状態でボールを奪い、空いていて使えそうなスペースがあれば速めに攻めるのが肝要だ。平たく言うと奪って即刻カウンターが望ましい。
または安西・白崎コンビのように、一度大外のレーンから攻め切ってSBがWGに注意を払うように仕向けて、そこからハーフスペースを狙うやり口も有効。鹿島は安西がザクザクと大外のレーンを侵攻していったが、マリノスなら両WGだろう。つまりWGのクォリティが物を言う。テル、ケイタ、頼んだぞ。。。

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おわりに、そしてイニエスタ

ビッグネームが多く所属する神戸だが、直近の戦績は決して芳しくない。っていうかサポーターが1時間居座るレベルで悪い。だからこそ、アウェイではあるが「攻撃力はあるけど脆さもある」マリノス相手に攻め勝って流れを取り戻したいだろう。

だが、それはマリノスも同じこと。セレッソ戦の惨敗を受け、どうにか勢いを取り戻し、もう一度上位に噛み付いていきたい。ネームバリューでは確かに劣る相手だが、与しにくい相手ではないはずだ。それに「サッカーって名前だけじゃないんだぜ!」というメッセージを発信するいい機会だとも思う。(あれだけ質が云々とか言ってたくせに)

イニエスタやビジャを観に、首都圏のバルセロナサポーターの人も多く日産スタジアムに足を運ぶだろう。チケット売上数はなかなかの数字と聞いている。ここで横浜名物アタッキング・フットボールでもって勝ち切れば「Jリーグだって楽しいサッカーあるんだ」「イニエスタもいいけど横浜もいいな」と目の肥えたクレ(バルササポーター)たちの心も揺り動かせる、、、かもしれない。
しかも「イニエスタとビジャがいるチーム相手にすげえ勝ち方した奴らがいるってよ!」とあれば、騒ぎ出すのは日本のサッカーファンだけでなく、海外のファンやクラブ関係者も惹きつけるかもしれない。「ちょっとメガクラブのSDー、うちの選手たちを嫌らしい目で見ないでよぉー」とか言えちゃうかもしれない。

名選手たちの名前より大きな野望を持って、挑戦者らしくガツガツ攻めて勝ちにいきたい。

最後はこの曲でお別れです。森山直太朗で「そしてイニエスタ」。

 

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