どうも、「希望職種は遊び人でジョブチェンジ活動中」系マリサポのお市です。私をダーマ神殿に連れてって。
ここのところ身辺がバタバタしておりまして、ブログの更新が滞ってしまってすみません。
一方でいろんな方々から応援のコメントをいただいており、本当に嬉しく思っております。心よりお礼申し上げます。
さ、身の上話はこれくらいにして、ゲームを振り返っていきましょう。
スタッツはこちら。左の緑色がマリノス、右の水色が名古屋です。(出典はSofaScore.com)
まず目を引く数値は名古屋のBig chances:6とマリノスのGoalkeeper saves:5ですね。
数字で見てもGKのパギさんに救われたゲームだったことがわかります。試合後私のような小心者は安堵のあまりパギさんユニを着た某インフルエンサー様を拝んでしまいました。パギさん教は偶像崇拝OKだと信じたい。
あとマリノス側のAccurate passes(成功したパス)が447本で成功率が83%のわりに、名古屋のInterceptions(インターセプト、パスカット)が20回と多いところも気になります。
試合をご覧になった方はお分かりの通り、そして数字が表すとおり、マリノスは名古屋の前線からの守備、もっというとパスコースの限定に苦しみました。高い位置でパスカットされ、チャンスを多く作られた、、、という見方ができそうです。
それでは「なぜ名古屋は何度も攻撃を続けられるようパスカットを続けられたか」ということを加味して、名古屋戦レビューはっじまーるよー。(以下、書きやすさ重視で「だ、である」口調です)
目次
◾️合言葉は、縦パスを「入れさせろ」
キックオフ時の立ち位置はこんな感じ。
マリノスは「3 Jr.(マルコス、エジガル、ヒロセ)」の一角にしてCFのレギュラーを射止めかけていたエジガル・ジュニオを負傷で欠く。なので「3Jr.」の一角、左ウィングのクリリンことマルコス・ジュニオールをCFに起用。「偽9番や!」という声もあったがあんまりCFの位置を動かなかったので、あんまり偽9番っぽくはなかったかも。
反対に前節鹿島に苦汁を嘗めさせられたものの、スタートダッシュに成功した名古屋は前節と同じスタメン。1人辺りがカバーすべきエリアが均等で、イタリアの名将アンチェロッティをして「最も守りやすい」4-4-2を採用している。
◾️名古屋のプレス
キックオフから名古屋は、マリノスにボールを保持されてもDFラインを高く維持し、前線からプレス。畠中しんちゃんとチアゴ、そしてパギさんのパスコースを限定しにかかる。
役割分担としては、長谷川さんがジョーと協力しながら喜田へのパスコースを遮断。マリノスの攻撃の第一歩を潰す。ここまではぶっちゃけ「アンジェマリノス傾向と対策(片野坂知宏著)」の第1章にあるくらい当然の対策。(というかアンカーを持つクラブへの対策の第一歩か)だが、長谷川さんが寄ればジョーがパスコースを消す、ジョーが寄れば長谷川さんが消す、とロープで繋がれたかのように畠中・チアゴから喜田名人へのコースをケアし続けた。
さらに天野・三好のインサイドハーフ2人が中央に位置どり次第、米本・シミッチのボランチコンビがこれに対応。これも「アンジェマリノス傾向と対策」にありそうな対策だが、名古屋が他と違ったのは「どこまで天野・三好についていくか」というところ。
普通はあんまりついていきすぎると中央のスペースが空くから、と天野・三好がサイドに流れると捨て置くのが定石。だが名古屋のボランチコンビはDFラインが高く維持されているからか「どうせスペース空けてもボランチの相方かCBが出て潰してくれる」とばかりに、片方だけは結構ついてきた。
そのため、マリノスの攻撃は2トップとボランチコンビが睨みを効かせる中央を回避し、2トップの脇を使うようになった。一度サイドに振って相手の中盤ごとサイドに寄せ、ガラ空きになった中央を使った前半3分、健さんのクロスが上手くいっていれば…というこのシーンは2トップ脇を使った崩しの好例か。
◾️×縦パスを刈り取る ○縦パスを受けたところを刈り取る
だが名古屋はその2トップ脇に和泉が入るなど徐々にマリノスのビルドアップ用のルートを制限し始める。その制限の狙いは「早すぎるタイミングで縦パスを出させること」にあったと思う。以下は失点直前の陣形(ざっくり)。
降りてきた三好にチアゴが縦パス、三好は米本に寄せられ反転できず。サイドの健さんは和泉にケアされているため、テルに出そうとしたが吉田豊に奪われた。
そこから和泉にSB(松原)の裏を突かれ、アンカー(喜田)の横に入った米本を経由して逆サイドへ。サイドに流れたジョーに起点を作られ、跳ね返したもののPKを与えてしまった。
と、事象を説明するだけだとわかりにくいが、
「中央でボールを持つIHに鋭く寄せてプレーの選択肢を削り、ボールを奪いやすくする」
「太字のスペース近くに味方が飛び込めるタイミングで縦パスを出させて、ボールを奪う」
「スペースを使ってボールと陣形を前進させ、最後はジョー&シャビエルにゴール近くでプレーさせる」
という風に名古屋は極めて計画的にマリノスの攻撃を食い止め、高い位置からカウンターを仕掛けたといえる。PKという形になったが、このゴールは名古屋の狙い通りだったので、さぞや風間大僧正はお喜びだっただろう。私はスタンドで過呼吸に陥りかけていたが。
◾️嬉しくない「パス成功率」
一度このシーンを受けると、攻撃の第一歩であるCBやGKも縦パスを安易に出しにくく、どうにかスペースを空けられないかと横パスが増える。図は前半のチアゴ、畠中、パギ3名のパスの種類とその成功率*1。(集計・グラフ化はSplyza Teamsを使用しました。)
*1:ここでいうパスの成功は、「味方が出したパスを収める」ことを指してます。そのあと奪われるケースも「成功」とみなしています。
縦パスの多さがすべてではないが、「相手の穴を見つけるための横パス」が多かったともいえる。参考として前半のチアゴのパスがこちら。(集計はSplyza Teamsを使用しました。)
何本か斜めのパスはあるものの、相手のブロックの外を通る、いわば相手からすると「見捨てていいパス」だったりする。なかなか相手の隙をつく第一歩となるパスが出せなかった。
よって前半は「CB・GKからの縦パスのあとを狙う」名古屋の狙いにハマることが多かった、といえる。
◾️変態速攻ver.2.0.〜出し手から受け手までびっくり人間〜
それでもタダでは転ばないのがアンジェマリノス2019。横パスを繰り返しながら、穴を見つけ出した。そこを突いたのが「ハマのラポルテ、いやラポルテがむしろフランス産畠中では」でおなじみの畠中しんちゃん。ハマりかけた名古屋のハイプレスの逆手をとってパス本数の少ない速攻を発動させる。
しかし、どこか見覚えのある攻撃だな…と思ったら、急に思い出した。エリク政権下で猛威を振るった「敬真+マルちゃん」の裏抜けツープラトンアタックだ。だが、前線2枚の反則的なスピードに依存したツープラトンアタックとは異なる。
異なる点はゴール前まで迫られるピンチのあと、狭いスペースから脱出するためのパスが出たこと。起点になったのはそれまで封じられていた畠中しんちゃん。真骨頂である「左右どちらの足でも高精度のパスが出せる」という真価を見せつけるように、利き足とは逆の左足でパスを出した。
ピンチのあと流れたボールを刈り取ってもう一度攻撃をしようと、名古屋の選手はマリノスの選手に合わせて、ボールのある左サイドへ集まった。たしかに密集している分ボールを奪われやすいのだが、そこを抜けてしまえば広大なスペースが広がっている。そこへ出したしんちゃんのスキルもさることながら、ボールが来ることを信じて待ち攻撃の起点となった三好、仲川、マルコスの3人の判断も素晴らしかった。
ちなみに畠中しんちゃんがパスを出す前、よく見ると、喜田名人が三好がフリーであることを指さしているのがわかる。三好が絶好の位置でフリーだと気付けたのも、彼のたゆまぬ首振りのおかげか。なお、喜田名人の首振りについては、安藤教授のレポをご参照。
言い過ぎかもしれないが、このゴールは、新たな引き出しをアンジェマリノスが獲得した証でだと思っている。「サイドの連携から三角形作ってグラウンダーのクロス→ファーで合わせる」というパターンだけでなく、相手のDFラインが高いこと、そしてプレスのためにスペースを空けてでも寄せてくることを知った上でそれを逆手にとった攻撃ができた。「引き出しの少なさ」を悔いた去年からの成長ポイントともいえる。
2:プレスをかいくぐるための工夫
◾️パスの長さを変えたGK+2CB
後半、マリノスは改善のために修正をしたが、そのテーマは「2CBが安心してパスを出せるようにすること」にあったと思う。そのテーマをもとに各自が様々に考えて行動していた。
下のグラフはパギ、チアゴ、畠中でのパス本数の割合。左が前半で右が後半。(集計・グラフ化はSplyza Teamsを使用しました。)
畠中しんちゃんが多くパスを出すようになったことに加え、(パスの絶対数こそ減ったものの)全体のパス本数のうちパギからのパスが占める比率が上がったことが見て取れる。
比率以外にも後半からの変わった点がある。パスの種類の増加だ。下の図はGK、2CBの3名のパス種別と成功率。(さっき出したグラフの後半版。集計・グラフ化はSplyza Teamsを使用しました。)
左側のグラフに、前半にはなかった「キーパーのロングフィード」や「ロブパス」が増えたことがわかる。相手のプレスをかいくぐるために、前半は横パスを多用し、横の動きで穴を探そうとした。後半はそれに加え、パギはロングフィード、畠中しんちゃんは浮き玉のパス(ロブパス)など「頭上のパスコース」も使って繋ごうとしたわけだ。
とりわけパギさん御用達なのが、松原健へのロングボール。180cm超モデル体型の健さんと、比較的空中戦が不得手なサイドアタッカー(この場合は和泉)を競らせることが狙いだ。空中戦だと健さんは高確率で勝ってくれるので、マイボールにしやすいし、相手のFW2枚のプレスを回避できる有効な手立てといえよう。
プレスに行ったはいいものの、その頭上を通して1列奥の松原やIHにパスが出る。そうなってくると「前に寄せにいきすぎるとロングボール来るな。。。」と相手の陣形が下がりだす。
このようにスペースが空いてくることを心待ちにしていたのが、我らが喜田名人である。
◾️圧倒的喜田拓也、その裏で
名古屋側もマリノス側も、色んなサポーターの賞賛の声を集めたのが喜田名人のパフォーマンスだった。
もはや私が言及しなくてもいいなこれ、、、ってくらいに喜田名人が激賛されている。それもそのはず。後半の攻撃のほとんどが、喜田名人が起点になったものだからだ。
だが、なぜ前半息を潜めていた喜田名人が後半途端に輝き出したのか。以下は後半の陣形をざっくり描いた図。
まず、先述の通り2CBとGKがパスの長さを変えてきて、前傾でコンパクトだった名古屋はFW・MF間を広げてでも長短のパスに対応しなければならなくなった。これで喜田名人がハブとして躍動するためのスペースができた。いわば舞台設営か。
主演の喜田名人はいる、舞台となるスペースもできた。となると助演となるボールの預け先が欲しいところだが、ここで輝いたのが左サイド、とりわけ天野と広瀬のコンビだった。
まず天野がLSBのようにサイドに開く。そこで出来たスペースに広瀬が入る。マリサポからすると見慣れた「あまじゅん?いや陸斗だよ」の計である。鳥栖よりも人についていく名古屋の守備に対してこの計は効果的で、中盤の門番として睨みをきかせていた米本を悩ませた。
なお、このときタッチライン際に立ち、宮原を釣り出しつつ天野&広瀬が使うハーフスペースを空けた遠藤渓太の判断も良かった。
そうなってくると左サイドにパスコースが出来る。左サイドを潰そうとしたらエントレリネアス(頭に「春野菜の」とかつけるとオシャレな料理っぽいが要は相手と相手の隙間でボールを受けること)の上手い三好が浮く。
じゃあ左に人をかけて三好も潰そうとすると右の仲川&松原の「三度の飯よりCB・SB間」コンビがフリーになる。ますます名古屋は誰を潰すべきか迷う。
自分の背後は愚か、わずかな隙間でも見つけてターンしてパスを届ける喜田名人は、いわば「認知・スキャニング」のバケモノ、主演級の輝きだった。だがいくら彼が素晴らしくとも、パスの受け手がいなければ首振りや動き直しなどの努力も水の泡だ。その意味でせっせとパスコースを作った天野&広瀬は、もたいまさこと小林聡美並みに効いている助演だったと思う。
◾️トメルケール×適材適所
我らが喜田名人が認知・スキャニングのバケモノと化して、左サイド起点の攻撃が進んできた中で、名古屋は切り札の相馬勇紀を投入。去年の日産スタジアムでマリサポにトラウマを植え付けた大卒ウィンガーは、攻守に走り回って疲れが顕著だった松原を狙い撃ちした。
左からはスピードでSBを千切れる相馬、右からはテクニックで打開できるシャビエルとサイドで優位に立った名古屋。「あるものは使い倒そう」とサイドから攻め込む。数値的には前半のがやられていたようだが、スタジアムにいた身としては後半の25〜35分くらいが一番生きた心地がしなかった。
今季の名古屋の強さは何なのか、シミッチの加入か、それともトメルケールの浸透かと戦前に考えていた。だが、実際に試合をしてみるとそれらよりも適材適所の役割分担が大きな要因なのではないか、と感じた。
例えば米本は、それまでボールを狩る能力に長けるものの動き過ぎてスペースを空けてしまいがちだった。だが名古屋ではシミッチやDFとの距離が近く、スペースを埋めてくれるので安心してボールハントにいける。
他にも長谷川さんとの分業で守備の負担を軽減してゴール前での仕事に専念したジョーもそうだし、縦への突破に専念できるようタッチライン際に張り付いた相馬もそう。各自が得意分野に専念できる配置こそが、いわゆる「風間再生工場」の正体なのかもしれない。
◾️タカはクローザーにあらず
などと呑気に構えているうちに、マリノスは相手陣地で奪われる→サイドから突破されて自陣に戻る→跳ね返してもプレスの網にかかってショートカウンター、、、とドツボにハマりかけた。起死回生の一手としてボスが切ったのは、ジョーカーとなるイッペイではなく、扇原貴宏だった。
「は!?今必要なのは攻撃を完遂するアタッカーだろ?イッペイちゃん入れようぜ!」
などと頭に血が上った愚者な私はスタジアムで思ったが、実はこの交代は割と理にかなっていた。ドツボにハマるループの根源である、「相手のプレス」の回避と守備の安定を一度に実現するカードだったためだ。
渓太と代わったタカは喜田名人とボランチコンビを形成。AJ含めた「キャプテン全載せ3センター」が出来上がる。渓太のいたLWGには三好が入り、シャビエルの裏を突く。
タカが入ったことにより、それまでパスコースを探しあぐねた2CBがパスを預ける候補が1人増えた。広瀬がボランチの位置に行かずとも選択肢を保ち続けられるようになったのだ。
これによりバイタルエリアからゴール前まで顔を出せるようになった広瀬は、終盤2つの決定機に絡んでいる。最後まで走りきれるスタミナと隙を突くように動ける賢さ。ここまで出来ると「広瀬は決定力がなあ」と「SBには求めすぎでは…?」という高い要求も納得である。
おわりに
ということで図だのグラフだのを投入してみたら結構後半力尽きてしまいました。。。
この「xG」が示すようにけっこう名古屋にやられたゲームだったかとは思います。
やられたゲームで「あれがダメだこれがダメだ」というと気が滅入るので、極力「うまくできたところ」にも触れるように振り返ってみました次第です。速攻・遅攻やパスの長さの使い分けなど、様々な攻撃ができるようになってきた上に、プレスを剥がす術も増えてきたのは収穫だと思います。
ただ、三好の最後のシュートが入らなかったように、チアゴから畠中ばりのパスが出なかったように、もっと個々人のスキルも伸ばせるのではないかと思います。これから先、タイトルという大目標をハッタリではなく現実的な目標とするには、トメルケールのようなボールの受け方、出し方、カラダノムキなど細かいところにも気を配っていく必要がありそうです。
収穫もあって、今後伸ばすべき伸び代もある。今年のマリノスも応援しがいのある、追いかけがいのあるチームだと思います。次はミシャとの内ゲバだぜ!
それでは今回はこの辺で。
<この項・了>