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2018シーズンのおさらいをしよう
(このタイトル使えば結論が曖昧でも許されるかと思って)
どうも、「三度のメシよりガリが好き」系マリサポのお市です。
激動の2018シーズン(昨季)が終わり、2019シーズン(今季)が始まりますね。背番号予想とか、フォーメーション予想、順位予想といろいろ楽しみな時期です。
ただ、何の不安もなく今季のスタートを切れるわけでもありません。昨季のマリノスのリーグ、カップ戦の成績を振り返ってみましょう。
リーグ戦12位、ルヴァン杯準優勝、天皇杯4回戦敗退
年間総得点:90(リーグ56得点、ルヴァン杯26得点、天皇杯8得点)
年間総失点:79(リーグ56得点、ルヴァン杯16得点、天皇杯7得点)
シーズン開幕時の目標が「タイトル奪取」だったことを踏まえてこの数字だけ見れば、「失敗」のシーズンだったといわざるを得ません。
ならばその「失敗」のシーズンを踏まえて、クラブはどういうところを改善していくのか?
サポとしてはその辺気になったりするわけです。今季の行く末を考えるきっかけとして、昨季のおさらいをしてみたいと思います。
おさらいのためのツールとしては、得点・失点のシュート位置、アシスト位置、そしてアシスト一個前のパス(セカンドアシスト)の位置を用います。
シュートした位置だけを見ても、「やっぱウーゴはワンタッチで合わせるのうまいなあ」とか「げえっ またパトリック!?」とか個人の話に終始しちゃいがちです。
でも、そこでアシストとアシスト一個前のパスの位置を含めれば、どこから点をとろうとしたか、どこから攻め込まれたかは、ちょっとわかるかなと思います。
(決して全試合見直すのがしんどかったから回避したわけではありません。というかDAZNさん過去の試合消すの早すぎ…)
今回はこれらの位置をわかりやすくするために、画像に点を打ってマッピング、可視化してみました。まずは得点の分析からしてみます。
2018シーズン得点分布の変遷
昨季のマリノスは得点こそ多かったわけですが、そのパターンは割と限定的でした。ワンパターンで柔軟性がない、という見方もできますが、得点が期待できる「型」、「武器」をチームとして持っていた、とも言えますね。
そしてシーズンが進むにつれ、「武器」は徐々に増えていきました。どのように増えていったかを考察しながら、マリノスの得点増加の理由をそこそこ明らかにしていこうと思います。
①左サイドの連携
昨季マリサポがよく目にしていた、左サイドバック(LSB)、インサイドハーフ(IH)、左ウィング(LWG)の連携は、シーズン序盤から猛威を振るっていました。
この頃LWGにはユン・イルロク(ゆんゆん)や遠藤渓太(渓太)が務めており、メンバーは固定されていませんでした。ただ、LSBは山中亮輔(山中)、IHは天野純(AJ)が開幕からスタメンの座をがっちりキープ。この2人を軸として、そこにLWGやアンカーの扇原貴宏(タカ)や喜田拓也(喜田プロ)が絡む攻撃はポステコグルー・マリノスの代名詞となりました。
代表的なシーンがこのゴールですね。LWGのゆんゆんが内寄りに入り、山中がタッチライン際を走るスペースを空けています。高いクロス精度とスピードを武器とする山中の良さを活かしてますね。(まあ彼今季いないんですけど)
この時山中にパスを出しているタカは、AJとポジションチェンジをしています。カウンターに備えてLSBの裏のスペースを埋めてますね。こうしたポジションチェンジは相手DFを混乱させるだけでなく、ボールロストしてカウンターを受ける場合の予防策にもなっています。
左サイドに関して言えば、シーズン当初から連動した動きができて、強みになっていました。
②右サイドの逆襲
左サイドが強力な分、「きつくなったら左サイドに回して、山中に突破させる」という悪癖も出てしまいました。その打開策になったのが、今まで右ウィングが固定されていなかった右サイドからの攻撃です。言い換えれば、仲川輝人(テル)のレギュラー定着がそっくりそのまま新たな武器になったんですね。
この図は、テルがレギュラーを獲得し始めたW杯ブレイク以後のゴールも含んでいます。
画像の左側、右サイドからの攻撃を見てみるとわかるのですが、ハーフウェーライン付近からのセカンドアシストが生まれ始めました。これこそ、右サイドバック(RSB)の松原健(健さん)とテルのコンビが得意とする、「長めのグラウンダーパスによる突破」です。
その象徴的なシーンがこちらです。
いわゆるハーフスペースと呼ばれるピッチ内よりのスペースを駆け出すテル、そこへ速く長いグラウンダーのパスをねじ込む健さん。並外れたスピードを誇るテルだからこそ間に合うようなパススピードですが、速いがゆえに相手DFは反応しきれず、その隙間を縫っていきました。
あとはテルがペナルティエリアの脇を深くえぐって、ニアに詰めた伊藤翔(伊藤)にパスして勝負ありです。ストライカーとしてニアに欠かさず詰めるようになった伊藤の進化も垣間見える一撃でした。(まあ彼今季いないんですけど)
③左で作って右で仕留める
テルの覚醒により右サイドからのアシストが使えるようになったわけですが、さらに右サイドで仕留める形も作れるようになりました。センターフォワードのウーゴ・ヴィエイラ(ウーゴ)、伊藤を囮に使い、相手の視線を外してエリア内でパスを呼び込めるストライカー気質のテルに合わせるという形ができたわけです。
テル自身が「監督が望んでいる形」とコメントしていたように、このゴールは昨季のマリノスの完成形ともいえます。ウーゴ&テルの動きもそうですが、高い精度のパスを出せるAJがエリア付近のハーフスペースに入っています。テルがエリア内で合わせる動きができるようになった頃から、AJはエリア近辺によく顔を出すようになりました。
その理由としては、メンバーが固定化され、各自の動きが明確になったことが挙げられます。この頃IHとして新境地を開拓した大津祐樹(おーつパイセン)がWGの位置に入り、山中と健さんが「偽SB」と呼ばれるボランチに近い中央のポジションをとっていますね。これによって相手がボールを奪い、カウンターをしようとした場合、必ず彼らの近くにパスを通さないといけなくなっています。
こうした「高い位置をとっても、奪われたあとのリスク管理を後ろの選手がしてくれる」という安心感が、AJやテルの位置どりを1つ前に押し上げたのではないかと思います。
2018シーズン失点分布の変遷
お待たせしました。失点分析のお時間です(白目)
マリノスの失点パターンもまた、シーズンが進むうちに変遷を遂げていきました。得点パターンの変遷がチームの武器を増やした積み上げだとすると、失点の変遷は、「出た課題を1つずつ解決した結果」とも言えます。失点パターンができて、それに対策して、また新たな弱点を突かれて、それに対応して…というのを繰り返し繰り返し実施してきた試行錯誤の跡です。
もっと言えば、失点パターンの流れを見れば、マリノスが直面してきた課題をおさらいできるかと思います。早速象徴的なアレから振り返ってみましょう。
①飯倉チャレンジ
序盤の失点のマッピングを見ると、明らかにおかしいシュート位置が何個かあります。
(ちなみに失点マッピングにおける相手の攻撃方向は画像奥から手前です。なので画像の左側は、マリノスの左サイドです。)
そうです、このやたら深い位置からのゴールこそ、ハイラインの裏を埋めるべく高い位置をとったゴールキーパー(GK)飯倉大樹(飯倉)の頭上を射抜くロングシュート、「飯倉チャレンジ」の形跡です。
この対策として、マリノスは(というよりボンバーは)、試行錯誤しながらラインを少しずつ下げることにしました。
この試行錯誤がほんっとーーーーに難しかった!
シーズン当初「飯倉チャレンジ」を招いた極端なハイラインから、2017シーズンまでに慣れ親しんだ深い位置まで下がるライン設定を試みたアウェイ浦和戦のようなゲームもありました。ただ、低すぎるラインは慣れている守備のやり方で跳ね返せるメリットもありますが、リスクも同時に孕みます。前線のアタッカーと守備陣の距離感が広がりすぎ、中盤の選手が埋めるべきスペースが広くなりすぎてしまいます。
そのため対戦相手や試合の経過を考えて、細かくライン設定を行うよう、チームはシーズン通して試行錯誤を強いられました。何度か破綻することは終盤にもありましたが、「コンパクトな陣形を維持できるいい塩梅の高さ」を得られたかと思います。シーズン中盤の失点分布をご覧ください。
深くからのシュートの本数が増えていません。つまり「飯倉チャレンジ」が序盤で打ち止めにできたといえます。飯倉の位置のプロットができていないのが残念ですが、彼の位置も極端に高いということはなかったかな、と思います。
②右サイドからアシストされた失点
ライン設定は試行錯誤の末に少しずつ最適解に近づきましたが、依然として減らなかったのが、サイドを起点とした失点です。とりわけ序盤でよく見受けられたのが、自陣右サイドを崩された失点です。
失点につながらなかったシーンもありますが、基本的に右サイドバックを務めた健さんや家内は高頻度で「相手の左サイドのプレーヤーと対峙する」「CBとの隙間を埋める」というSBのタスクに加え、後ろから飛び込んでくる相手SBや中盤の選手といった2人目の動きをケアする必要がありました。つまり、「1人で2人の相手と隙間を守る」というワンオペ対応を高頻度で強いられました。
その対応策になったのが、またしてもテルです。スピードに長けた彼が全速力で戻ることで、後方から入ってくるSBや中盤を牽制することができました。ヨーロッパだとアトレティコが用いている、「WGの最終ラインへの参加」を加え、RSBのワンオペ状態を減らすことに成功しました。
ただ、左サイドからの失点はなくなりませんでした。最終的なシーズンを通した失点分布をご覧ください。
これは左サイドバックを務めた山中が…という話というより、左サイドから攻撃を組み立てようとしたもののボールを失い、カウンターを受けることが多かったためです。
カウンターを止められなかった理由の1つが、SBのスペースを埋める人がいなかったことが挙げられます。昨季マリノスのキーワード「偽SB」に加え、SBが高い位置をとることが多いゲームが多くありました。このやり方は結果的にSBの位置のスペースを空ける危険性も孕みます。
右でも同じ傾向は見られたんですが、左の山中を高い位置(または偽SB)で多用していたこともあり、左の方がこの「SB不在」現象が多く見られたかなと思います。
③自陣深くで奪われたあとのショートカウンター
これは記憶に新しいですね。象徴的なシーンはこれでしょうか。
GKやDFからショートパスを繋ぐマリノスのスタイルは、前線からのプレッシングによるボールロストの危険性と隣り合わせです。特に終盤、ルヴァン準決勝2ndレグ(尻に火のついた)鹿島、アウェイガンバ戦が契機となり、そこからルヴァンカップ決勝の湘南戦、アウェイ鳥栖戦と、多くの人数をかけて連動したプレッシングをするチームと多く当たりました。その際に如実に現れた課題が、この「プレス耐性」です。
この土居のゴールのように、相手FWがボールを奪って直接ゴールへ迫るパターンもありましたが、GKやDFからのパスコースもプレーする領域も狭められ、パスミスを犯してカウンターを受けたケースもあります。だんだん攻め手を失い、相手のペースに飲み込まれていくゲームが終盤は多くあったと思います。
「マリノスのビルドアップは、前からのプレッシングに耐えられない」という点については、イメージが定着してしまったのは、やはりルヴァンカップ決勝の敗北以後でしょうか。あまりに象徴的でショッキングな敗北でした。
ショートカウンターに持っていくためにゴールキックを使ってマリノス側の陣営に蹴り込みつつ、マリノスの自陣からのビルドアップがサイドに向かうようにプレッシングで限定。サイドに来たら圧縮してボールを奪い、狭いスペースをコンビネーションで打開して突破する。。。マリノスの課題を凝縮し、明らかにしたゲームだったと思います。
失点を減らすために必要なことは?私なりに考えて見ました!
(このタイトルなら結論が曖昧でも許されるかと思い)
今季マリノスが目標通り「優勝争いに絡む」ためには、やはり失点を減らすことが肝要です。
そのためには、先述の「プレス耐性」が真っ先に手をつけるべき課題かな、と思います。
ただ、プレスをかわしてショートパスを繋ぐ、というのは簡単ではありません。それこそパスコースをばれさせない体の向きや、出し手に対してパスコースを複数作るための受け手の動きなどなど、「個人が」日々の練習から意識していく必要があります。
チーム全体の設計でこの課題を解消する手立てとしては、あまり昨季は使わなかったDFからの中長距離のボールが挙げられます。ただ、これを使うためには高身長で空中戦の強いFWを使うとか、相手のスペースをピンポイントで突く高精度かつ速いキックを入れるとか、「ボールを入れても必ずボールを回収できる」仕組みが必要です。
その仕組みをポステコグルー監督が準備できるか、はたまたショートパスにこだわって全く別のビルドアップを見せてくるか、そこは今季の注目ポイントですね。
また、「カウンター対策の徹底」も重要なポイントです。
ビルドアップを成功させて、相手陣地まで迫っても、ミスによってカウンターを受けるシーンがあります。そのため左サイドの連携が「武器」であり、カウンターの温床でもある旨は先述の通りです。
「じゃあミスを減らしましょう」というのも1つの考え方ですが、私はそれよりも「ミスからカウンターを受けた後の対処」を磨く方が重要かと思っています。得点分析の部分で触れた「上がっても誰かカウンターへのコースは埋めてくれる」という安心感をもたらすポジショニング、いわゆる「予防的カバーリング」がより多くの試合で徹底できれば、失点は自ずと減っていくはずです。
また、この「予防的カバーリング」は得点増の可能性も秘めています。カウンターを高い位置で潰して、こちら側の攻撃に移れば、相手がカウンターのために上がった跡を使えます。つまり「カウンターのカウンター」が狙えるわけです。その効果を考えると、「チャンスシーンの時、相手がカウンターで使うパスコースをつぶせているか」も今季の注目ポイントですし、「選手たちにいかにポジショニングを浸透させるか」についてはポステコグルー監督の手腕が問われる部分かと思っています。
いかがでしたでしょうか?(このコメントがあれば結論が曖昧でも許されるかと思い)
ポステコグルー政権1年目で得られた新たな武器、噴出した課題をどう今季に活かしていくか、ここは定点観測で見ている外部の批評家よりも、継続的にチームを見ている我々の方が色々な気付きを得られるかもしれません。長所を磨いて増やし、課題を解決していく姿は、それすなわちチームの成長です。今年も「成長するチーム」マリノスの進歩を間近で見届けつつ、応援していきたいと思います。
それでは今年もよろしくお願いいたします。とりあえず、まずは残留確定!(控えめ)