【塩分抑え目】vs仙台(A) ○2-8 @ユアテックスタジアム【ケチャップマシマシ】

 

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公式が最大手。

タイトルの通り、お祭りである。
「2007年以来の8得点」?「クラブ記録タイの得点数」?そんな過去のことどうだっていい。
今のチームが、今のサッカーをやりきって、8つの完璧なゴールを叩き出して勝った。この事実だけで十分すぎるほど満たされる。
思えば序盤(特に3節鳥栖戦を超えたあたりから)は結果が出ずに苦しんだ。
物知り顔の周りからは「んー、いいサッカーはしてるんですけどねえ」「もっと守備に重点をですねえ」などと言われ、周りからは「やーいお前の生え際ハイライン」とからかわれ、親族からは「サッカー見てばっかで浮いた話はないのか」と強度高めのプレッシングを受け・・・本当に辛かった。(一部私怨が含まれていますがお気になさらず)
そんな辛さを吹き飛ばして余りある大勝だった。
ブラボー!やったぜ!マーベラス!横浜優勝!天下泰平!万年無税!らぶあんどぴーす!

と言って騒ぎたいとこだが、案外そうも言ってられない。

もちろん素晴らしかった。現時点今シーズンのベストゲームだったことは間違いない。
ただ、決してマリノスが全ての面において仙台を圧倒したわけではない。仙台戦(というより5バック化する3バックのチーム?)のために立てた対策、さらには仙台のミスなどが絡んだ結果、この大勝を得たに過ぎない。
なので、まだ「どの相手に対してでも大量得点で勝てるチーム」ではない。ポステコグルー・マリノスは未完成なのだ。
この勝利を次の大勝へのロイター板とするためにも、細々と「マリノス夏のゴール祭り」を振り返ってみようと思う。

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(参考画像)ロイター板

5バック克服に向けて

まずは両チームのスタメンをおさらい。
我らがマリノスはいつもの4-1-2-3。特記事項があるとするなら前から2列目の右インサイドハーフに喜田プロが入ったことか。

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次にベガルタ。夏の補強で攻撃的MFを主戦場とする矢島慎也、そして「もはやマリノスユース卒だということを忘れつつある選手」の1人、恩返し弾枠のハーフナー・マイクを確保。
さぞやムッキムキかと思いきや、選手登録枠の問題で2人とも出られず。しかもルヴァン杯グループリーグで我々相手にハットトリックをキメた茂木くんは水戸にレンタル移籍。

それでも「和田拓也とは違うのだよ、和田拓也とは」ことFW石原、川崎からの流入組の1人MF中野など、確かなスキルを持った面々が顔を揃える。

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組み合わせてみるとこんな感じ。(スペースの関係上、選手名は省略)

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で、この組み合わせが前半のゴールラッシュの引き金となる。
前半の先制点前の状況を図示したのがこちら。
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「このクソ暑い中ハイプレスはキツい」というのと、「マリノスは後ろで持たせておけば大丈夫」という考えからか、仙台(黄色マーカー)は早々WB2枚(4番と2番)を下げて5バックを構成。マリノスの3トップと自陣5つのレーンをケア。
マリノスにはウェリントンもベンテケ(クリスタル・パレス)もいないので、「数的不利でもとりあえず前線放り込んでみる」ということはしない。例によってDFとGKでボールを回す。
結果として、向かって右側マリノス陣内で青い線で囲まれたゾーンが出来た。
ゾーンの中にいる人数をみると、仙台3人:マリノス6人という具合で数的優位になっている。
注目したいのが、白点線の動き。CB、LSB、DMFがパスを交換しながら位置を変えていく。
位置を変えていくんだけれど、図のような陣形は崩さない。
ベガルタの前3枚は鳥かご(輪オニ、ロンド)の鬼役のようにゾーンの中に閉じ込められた。
次に中盤を見ると、マリノスのMFは1人(図だと14番AJの位置)前目に位置取り、相手DMF(17番)を釣りだしたり、3トップが高めの位置をとって相手のDFラインを押し下げる。
そうするとゾーンの外で中盤が1枚浮くことになる。
この「浮いた中盤の1枚」へのパスコースを切ろうとしたりしなかったり・・・な仙台は、プレスをかけるのか、それとも完全に引くのか曖昧になってしまう。

こうした「曖昧な状態に陥った前線」と「必ず1枚足りない中盤」、そして「最終ライン5枚」で縦長に分断されたベガルタを相手に、マリノスは早々と先制に成功する。

このツイートでは書けなかったけど、「1枚浮いた」アマジュンを潰しにいったのは仙台の3CBの1枚。つまり、仙台は5バック化して5レーンを潰すという考えが早々潰されたことになる。
「あのマリノスがDFラインのボール回しから相手の陣形を崩すなんて数年前では…( ;∀;)」
「ていうか一連の流れなんなんアレ、プレミア?ブンデス?」
とか言ってたら10分も経たないまま、というか仙台がマリノスのやり方に慣れる前に追加点が入った。

追加点となった翔さん、いいえ翔様の1点目。またも左サイドでのボール回しから少しずつ前進。仙台は2シャドーの中野と阿部ちゃんを下げて後ろ5枚、中盤4枚の5-4ブロックを敷いて迎撃する形をとった。

showtime_1.pngこの時の「1枚浮いている中盤」はAJことアマジュンだったわけだが、仙台の中盤は「いったん後ろに下げてパスアンドゴーでバイタルに入る」と想定したか、潰しに行かずにステイ。
仙台からのプレッシャーが無かったため、AJは左サイドをチラ見。すると山ちゃんはシャドー阿部ちゃん、渓太はRWB蜂須賀とそれぞれのマーカーの背後をとっていることがわかった。

showtime_2.pngので、ちょっと持ち込んで左サイド(LWBの裏)をロングボールで突くAJ(27歳の誕生日おめでとうございます)

showtime_3.pngこれで渓太はLWBと1対1の状況が作れたわけだが、さらに注目したいのが山ちゃんと背後を取られた阿部ちゃんの差。この差を阿部ちゃんは最後まで埋めきれず、山ちゃんの高精度クロスを許した。

というのを踏まえて翔様の1ゴール目をご覧ください。

「ストライカー伊藤翔様最高かよ。。。2016年ワントップを張っていたのはそっくりさんだったのではないか。。。」な翔様のDFラインとの駆け引き&美しきワンタッチも素晴らしいが、5バックによってハーフスペース(ピッチを縦に5分割した際の2番目と5番目のレーン)を含む5つのレーンをケアされても、相手DFの裏をかけば抜け出せば問題ない!ということを証明した渓太と山ちゃんのランニング、こうした隙を逃さずパスを出したAJも素晴らしかった。

前に言及したが、マリノスは前半戦本当に5バックに手を焼いた。相手が立っているハーフスペースにも真っ正直に突っ込み、崩せないと見るや片方のサイド(主に左サイド)に人数をかけたが、ちょっとしたズレでボールを奪われてカウンターを食らって…というシーンは、もはやお決まりのパターンだった。

今回の仙台戦で実践し、2ゴールに結びついた対応策は、
1.後方の並びで数的優位を作る
2.数的優位を活かしてボールを回して相手の前線を食いつかせ陣形を崩す
3.ハーフスペースに立つ相手の背後をとる
4.2,3が出来次第そこに素早くボールを入れる
の4つが肝だった。基本的なことのように思えるが、今までは概ね1で止まってしまいがちで、結果として崩せずじまいだった。
それが後半戦になった今、身体の向きやパスの質で2が出来るようになり、各ポジションの選手が首を振って確認する癖をつけたことで3が出来るようになった。
さらに、サイドとハーフスペースの三角形を使った狭いスペースからの展開だけでなく、2点目のAJのように大きな展開を活用できるようになったことで、4がよりスムーズに出来るようになった。
(前半戦は意固地に狭いスペースからの展開をやっていたが、あえてやっていた説もある。)

仙台のアジャストの遅さに助けられたとはいえ、チームの成長を感じさせた一幕だった。

 

目には目を、ハイプレスにはハイプレスを

さらにこの後テルのゴールで3点目を奪取、主導権をマリノスが握ったところで仙台は打って変わって前線からハイプレスを開始する。
下の図のように「中盤で1人浮いている」問題も無事に解決、実はそんなに上手くハイプレスをかわせないマリノス最終ラインを襲う。
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(よく見たら画像は4点目が入ったあとでした…orz でも仙台の前プレはかかってたんです…)

「後ろから動かす」どころか、後ろでボールを繋ぐことすらままならなくなったマリノスは、ビルドアップとは別にもう1つ育ててきたチーム戦術を行使する。それが、

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いちおう「熱盛」ジェネレータ―で作りましたが熱盛感薄めですいません(;´Д`)

ということでハイプレスにやってきた仙台の裏に長めのパスを入れつつ、そのおこぼれを拾った相手DFに対しハイプレスを敢行するマリノスだが、ただ闇雲に行ったわけではない。

4点目となった翔さんもとい翔様のゴールの前、キーワードは「ボランチには触らせない」。

showtime2_1.png仙台の3バックがボールを持った時、3バックに殴りかけるわけではなく、中盤をマークするように立つ。(力尽きて図が描けませんでした)

showtime2_2.png縦に出せないので横パスを選んだDF大岩。パスを受けたDF椎橋に対しテルがグイグイと詰め寄り、このシーンを作り出す。

まず相手の縦パスを封じて横パスを出させる。徐々にタッチライン際に追いやり、相手がパスを出す方向を360度から180度へと狭めていく。縦に出すか1枚かわすかしかない状態に相手が陥ったところでプレス…と書くとものすごく普通のことだけど、以前のマリノスでは(ry

仙台戦でここまでハマった理由としては、やはり翔さんもとい翔様の存在が大きい。試合の映像を見返していてもテルや中盤の選手に対して「今は行くべき」「今はその場に留まるべき」と手振りで指示をしているのが見えた。ハットトリックだけでなくチームの前プレまで指揮するとは。。。ヴェンゲルさん、あなたが見込んだ才能は今花開いておりますぞ。

あとは、ハーフナー・マイクが不在だったのも大きい。
仮に最終ライン、特に空中戦に一抹の不安を残す山ちゃんwithキャナイのコンビに対し、マイクのような高身長FWを当てていたら、仙台のDFは迷わずそこへロングボールを蹴りこんだだろう。身長差を活かしたロングボールも、プレス回避術の1つであり、マリノスが不得手とする戦術だ。
横浜FCが戸島をあてがってマリノスのハイプレスを空転させた記憶があるだけに、マリノスの前線としては、ロングボールをケアする必要が生じる。
つまり、中盤のマークとは別に、DFへプレスする必要が出てくるのだ。中盤をマークすればDFは気持ちよくロングボールを蹴れるが、DFへプレスしたら次は中盤が空きかねず、縦パスを通されるかもしれない。マイクがいればロングボールという選択肢もあっただろうが、今回の仙台はその手段をとらなかったため、マリノスの前線は中盤のマークに専念できた。
空中戦に強いFWがいる場合のハイプレスは、今後も考える必要がありそうだ。

 

パサー松原健の可能性

後方からの崩し、前方からのプレスですっかり大差をつけたマリノスだが、「アタッキング・フットボール(和訳:君がッ泣くまで殴るのをやめないッ)」が今年のモットー。まだ泣いていないことを確認し、殴り続ける。その際のキーマンが、他あろうRSBの健さんだった。

山ちゃんのトンデモミドルの前、翔さんもとい翔様が抜け出すわけだが、そのパスは健さんからのボールだし、

翔様ハットトリック弾の前に抜け出したテルへボールを出したのも健さんだ。

さあ皆さまご一緒に。

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こうして「褒めるとなんか通ぶれる選手」の仲間入りを果たした健さんだが、チーム6点目、翔様3点目の2コ前のパスはたしかにすごかった。

まず状況を整理する。

キャプチャ.PNG健さんが2コ前のパスを通した瞬間。ご覧のとおり仙台は5バックで守っており、5レーンのいずれにも人がいるが、またしてもテルが相手WBの裏をとって駆け出している。問題はどこを通すか。

キャプチャ2.PNG健さんはここで、CBとWBの間、チャンネルと呼ばれる部分に速いパスを通してきた。CBとWBを結ぶ線の中点、どっちのDFにとっても脚を伸ばしにくいところへ、奪われにくい速さのボールを入れてきたのだ。正直ハブで観たとき、AJがパスを出したんだと思っていた。。。

このパスが出せるキックの精度もさることながら、一番えげつないのは認知能力ではないだろうか。その前の山ちゃんのミドルにつながるパスも、ほとんど受け手の方を見ずに蹴っているし、このシーンも目ざとくテルが「背後を取って」「オフサイドギリギリのタイミングで」飛び出したところを見つけてパスを出している。「どこに、どういう状況で、誰がいるか」を認知する能力があればこその芸当だと思う。

ドンドン裏を狙ったり、ダイアゴナルラン(斜めへの動き)も行うなど、ボールを持たない時でも多彩な動きができるテルとのコンビで、より一層健さんのパサーとしての能力が引き立つ。薄い本的な意味でも 期待値の高いコンビである。

 

総括

このように、様々な手法で仙台ゴールをかち割りに割り続けたマリノスだったが、2失点の仕方は「サイドで数的不利を作られる」、「CBとSBの間、チャンネルに侵入してきた選手のケアが甘い」といった理由によるもので、今までの課題が解消しきれていないことも露呈した。
先述した空中戦の強いFW問題は、新加入のドゥシャン僧正によって幾分か改善が期待できるかもしれないが、まだまだ課題は少なくない。

とはいえ、ポゼッションとポジショナルプレーを基盤に、手を変え品を変え点を奪えるようになってきたのは朗報中の朗報。身体の向きや予測によるテンポの速いプレーに慣れてきた選手も増えてきた。自信をつけるには最高の勝利だったと思う。

リーグ後半戦はまだ始まったばかりで、前半戦の借金は未だに大きい。1戦大勝ちしたからといって慢心せずに、1試合ずつ勝ちを増やして、前半戦の負けっぷりは「マジ酷かったよなwww」と酒の肴にしたいところ。次節FC東京戦から試金石となる上位戦が続くので、仙台戦のパフォーマンスが上位チームにもできるか、要注目です。

<この項・了>

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